15年度予算案、再増税に耐え得る環境整えよ


 一般会計総額96兆3420億円の2015年度予算案が閣議決定された。過去最大規模の予算である。算定の前提になる政府経済見通しは、昨年4月の消費税増税により、14年度は実質マイナス0・5%と5年ぶりのマイナス成長に落ち込み、15年度は景気回復を見込むも1・5%にとどまる。

 税率10%への再増税を実施する17年4月までに、それに耐え得る経済環境を整えられるか。国債発行を減らし経済再生と財政健全化の両立を実現できたと喜んでいられる状況ではない。

税収伸び国債発行抑える

 15年度予算案は、当初予算としては14年度の95兆8823億円を上回り過去最大規模である。新規国債発行額も、企業業績の改善を背景に法人税収などが伸びることから、36兆8630億円と6年ぶりに40兆円を下回る水準に抑えた。

 この点では、安倍晋三首相が語るように「経済再生と財政健全化の両立を実現させる予算となった」と言えなくもない。

 だが本紙が主張したように、昨年4月の消費税増税を実施していなければ、今回の想定以上の法人税収が間違いなく期待できたはずである。所得税も15年ぶりの賃上げ率などからそれ相応の伸びが見込め、さらに株高によって3%の税率アップ分以上の消費税収も望めた可能性を否定できない。

 裏を返せば、経済を痛め景気を下降させてから増税実施前の状態へ回復させるまでの少なくとも1年以上の時間と、13年度補正と14年度補正の両予算約9兆円を余計に費やしたわけである。財政健全化には増税を行うよりも経済成長による自然税収増を目指すべきだ。

 しかし、失った時間は取り戻せない。それだけに、これまで以上にデフレ脱却に向け経済再生、経済の好循環実現に注力せねばならない。その点で、15年度予算案は先に決定した3・1兆円規模の14年度補正予算案と合わせ、現在の2四半期連続マイナス成長の主因である個人消費の不振に対し、必ずしも十分とは言えない。

 13日に公表されたミニ経済白書は、14年4~9月期に消費税増税に伴う物価上昇が実質所得を減少させ、消費を1兆円弱押し下げたと推計。実質所得の減少に加え、駆け込み需要の反動減も2・5兆~3・3兆円程度と1997年の前回の増税時より大きかったと指摘した。国会審議を通じ、消費対策の充実へ柔軟な対応を期待したい。

 15年度予算案は新規国債発効額が前年度より4兆円以上減少し、国の基礎的財政収支は13兆4100億円程度の赤字に。地方を含めた赤字の対GDP(国内総生産)比を10年度実績(6・6%)から15年度に半減させる目標は「現時点で達成が見込める」(首相)見通しである。

財政健全化を焦るな

 財政健全化目標の達成は確かに大事だ。しかし、拘り過ぎは禁物である。高齢化の進展で毎年1兆円ずつ拡大する社会保障費の改革も不可欠だが、財政健全化は経済成長による税収増で徐々にだが着実に進めたい。第一に求められるのは再増税実施までの経済力の強化、好循環づくりである。

(1月15日付社説)