第3次安倍内閣、経済と安保で改革を断行せよ
第3次安倍内閣が発足した。中谷元氏を防衛相に起用した以外はすべて再任のスタートになる。安倍晋三首相が「アベノミクス解散」として経済政策を争点に衆院解散・総選挙を行い、国民の信任を受けたところである。公約した経済を筆頭に日本の再生を果たしてほしい。
道半ばのアベノミクス
首相は内閣発足後の記者会見で、総力を挙げて選挙公約を実現し、「アベノミクスの成功を確かなものにしていく」と強調した。衆院選で野党各党は首相の経済政策は失敗したと声を上げたが、選挙結果がその成否を決めるのではなく、安倍内閣の今後にかかっている。
4月に消費税8%となって以降、円安による輸入品価格上昇と相まった物価高に、長年の価格破壊に慣れた消費者の心理は委縮した。実質国内総生産(GDP)が4~6月期に続いて7~9月期もマイナスとなり、アベノミクスの苦闘状況が浮かび上がった。
大胆な金融緩和、財政出動に続く第3の矢・成長戦略に課題を残したままだ。無論、安倍首相は先頭に立って経済界に賃上げを要請し、今年の春闘では久しぶりのベースアップが実現した。消費税率10%への引き上げ延期にも首相は強い政治力を発揮した。景気が回復したとは言えない経済統計が発表されているが、国民の多くがアベノミクスは道半ばとみて状況改善を期待している。
消費増税による消費の落ち込みが明らかになる中で、消費税率を10%へ引き上げる2017年4月まで2年余、国会で絶対安定多数の勢力を得た安倍内閣にとって正念場の期間となる。成長戦略を軌道に乗せ、増税の不況圧力を乗り越える経済成長を実現しなければならない。
首相が会見で、選挙を通じて有権者の生の声に接したことで「アベノミクスを進化させていきたい」と、修正を示唆したことは重要だ。
衆院選の論戦において野党側は「格差の広がり」を強調し、株価上昇の恩恵を受けるのは富裕層のみで、国民の実質賃金は下がっていると訴えている。待機児童対策など弱者に配慮した、きめ細かい施策を強化していく必要があろう。
また、集団的自衛権行使を一部容認する閣議決定を受けた安全保障法制の整備は、中国が軍事的な拡張政策を取り、我が国周辺でも緊張が増しているところ、日米安保体制を強化する上で重要な課題だ。我が国の安保政策の前進に最善の努力を払うべきだ。
アベノミクスの成長戦略に結び付く規制改革、コンパクトシティーで若者が働き、結婚・出産に希望が持てる地方創生にも引き続き意欲を示したが、第2次内閣から引き継ぐ課題であり首相の実行力に期待したい。
強い指導力で改憲実現を
憲法改正について首相は「自民党結党以来の大きな目標」と述べ、改憲発議に必要な衆参両院で3分の2以上と、国民の過半数の賛成を得る努力をし、国民に理解を得られる条文の検討に意欲を示した。改革の最も大きな柱である。強い指導力と細かい配慮によって実現を期してほしい。
(12月25日付社説)