「戦後体制脱却」へ前進せよ


編集局次長・政治部長 早川一郎

 安倍晋三首相が衆院選での圧勝を受け第3次内閣を発足させた。組閣が第2次までだった祖父の故岸信介元首相が「もう一回総理をやらせてくれればもっとうまくやったのに」と安倍首相によく話していたというが、首相はそれを超えることになった。自身が「歴史的使命」と自覚している「戦後体制(レジーム)からの脱却」に向け、いよいよ大きく歩を進めるべき時に来たと言える。

 長期政権を見据えることのできる首相が最も力を入れて取り組むべきは、自民党結党の綱領にも掲げられた自主憲法の制定である。戦後レジームはこの現行憲法によってさまざまな制約を受けてきたからだ。すでに党の憲法改正草案がまとめられており、改正国民投票法も成立。国会の憲法審査会での議論も進み、来年の臨時国会で絞り込んだテーマについて条文を出して審査をし、次期参院選を目途に国民投票に踏み切りたいとの自民党幹部の意向も明らかにされている。その具体化を着実に進めてもらいたい。次国会で焦点となる安全保障法制の整備も新大臣の下、確実に進めねばならない。

 「戦後レジーム」とは、「ヤルタ・ポツダム体制」とも換言できるが、戦後70周年を迎える節目の年である来年こそ、首相が展開する「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」の成果が問われよう。日米同盟を基軸にした外交・安全保障の強化を図ると同時に、国連外交にも力を注ぎ、わが国を敵国とする条項の削除要求を強めるべきだ。中国や韓国との関係改善もテーマとなろう。

 第1次安倍内閣で実現した教育基本法の改正で、教育現場は改善され道徳教育の強化が叫ばれるようになった。愛国心や公徳心などの道徳力向上と家庭基盤の確立というベクトルをさらに強めつつ、教育の本格的な再生に臨まねばならない。

 もとよりこうした政治力は、経済再生の裏付けがなければ発揮できない。それ故、今回の衆院総選挙で信任された首相の経済政策「アベノミクスの継続」の真価が今後問われることになるが、与野党は国民の期待に耳を傾け知恵を絞り合って政策を練り推進すべきである。

 アベノミクスを支える「地方創生」は、地方にとどまらず国家の再興でもあり、新たな国づくりに直結する難題である。危機的状況に落ち込んでいる人口減少・超高齢化問題への解決に向け、地方と国、与野党の別はないはずだ。

 首相に求めたいのは、「志を立ててもって万事の源となす」(幕末の思想家・吉田松陰)とする変わらぬ姿勢だ。改憲の志を腹に据えつつ、連立を組む公明党や野党に丁寧な説得作業を積み重ね、新たに与えられたチャンスを生かしてもらいたい。