自民党圧勝、憲法改正へ本腰で取り組め
総選挙で与党が圧勝した。「景気回復、この道しかない」との安倍晋三首相の主張に有権者は未来を託した。安倍首相と自民党は数におごらず、これまで以上に丁寧かつ果敢に政策遂行に当たってもらいたい。
総選挙の「隠れた主役」
最大の争点とされたアベノミクスは、安倍首相も言うようにいまだ道半ばだ。これをどう前に進めるのか、必ずしも明確ではない。有権者が与党に投じたのは期待票と言ってよい。消費税率を10%に引き上げる2017年4月までにその期待に応えなければならない。
もとより課題は経済だけではない。わが国を取り巻く安全保障環境が大きく変化し、それに対応する国づくりが不可欠となってきた。忘れてはならないのは、第3次安倍政権が本格稼働する来年は戦後70年の節目の年になるということだ。国際的にも国内的にも戦後体制が問われる年となる。
安倍首相はかねて「戦後レジームからの脱却」を主張してきたが、否が応でもこれに向き合わねばならない。言うまでもなく、国内における戦後体制とは現行憲法に基づく諸体制のことだ。そこからの脱却とは憲法改正の実現にほかならない。
いみじくも今回の総選挙では憲法問題が「隠れた主役」と言われた。憲法改正の手続きを定めた改正国民投票法が今年6月に成立してから、初めての国政選挙となったからだ。衆参両院で3分の2以上の賛成を得て発議すれば、いつでも国民投票を行うことが可能となった。この意義は極めて大きい。
自民党は立党以来、自主憲法制定を党是とし、総選挙の公約では「国民の理解を得つつ憲法改正原案を国会に提出し、憲法改正を目指す」とした。今回の獲得議席は単独では3分の2の317に届かなかったものの、改憲が視野に入ったと言っても過言ではない。野党にも改憲派が少なくないからだ。
維新の党は首相公選制や道州制、一院制国会実現のための改憲を打ち出した。次世代の党は自主憲法を制定し国家緊急権などを新設するとした。改憲を掲げていた第三極は分党や解党で議席を大きく減らしたが、国会での発議を左右する議席は保持したと言ってよい。
総選挙で野党は候補者を調整し自民党に挑んだ選挙区もあったが、ほとんど功を奏さなかった。むしろ有権者には野合と映った。それは理念や政策を差し置いて反自民だけで候補者を一本化したからだ。そういう態度では政権交代可能な政党と見なされない。それが野党の最大の敗因と言えよう。
とりわけ民主党は国の基本となる安保・外交政策についての見解も曖昧なままで、国民の信頼を回復するには至らなかった。今後、野党は立て直しを迫られるが、その中心軸とすべきは国家観だ。憲法にどう臨むかが問われる。
立党の原点に立ち返れ
衆参の憲法審査会で改正論議を本格化させる時だ。自民党は改憲への国民啓発を怠ってきたきらいがある。
総選挙での圧勝を踏まえ、立党の原点に立ち返って改憲に取り組むべきだ。
(12月15日付社説)