衆院選投票日、「安倍路線」をどう審判するか


 第47回衆院選がきょう投開票される。自民党が過半数を大きく上回る勢いを保ってきたが、単独で290余議席を有する「一強」体制を維持するのか、憲法改正の発議に必要な3分の2にまで伸ばすのか。

 あるいは、自民、公明両党で政権維持のための安定した議席をどこまで獲得するのか、野党はどの程度まで巻き返せるのかなどが焦点となっている。

3回目の国政選で決着

 すべては第2次安倍内閣が掲げてきた「安倍路線」を国民がどう審判するのかにかかっている。突然の解散だったことなどから低投票率を予想する声もあるが、国の針路に直結する国政選挙である。アベノミクス(経済政策)、外交、安全保障、原発再稼働、教育、憲法改正などを総合的に判断し、貴重な一票を投じたい。

 安倍晋三首相は今回の解散に踏み切った理由として、来年10月の消費税率10%への引き上げを先送りする決断をしたことを指摘し「重い決断をする以上、速やかに国民に信を問う」と語った。

 その上で、「アベノミクス解散」と命名し、「前に進めるのか、やめてしまうのかという選挙だ」と訴えた。「この道しかない」と具体的な数字を挙げて訴える自民党に対して、野党側の反論が危機を煽(あお)る程度の守勢だったことが自民優勢の理由の一つと言えよう。

 ただ、すべての衆議院議員が失職し新たに戦う総選挙は基本的には政権選択選挙であり、安倍政治全体への審判が下されることを忘れてはなるまい。そして過去2回の国政選挙に大勝した首相が、3回目の今回も議席維持または増加などの結果を得れば、アベノミクスはもとより他の重要課題の路線継続に関しても信任されたととらえるべきである。

 今月10日に施行された特定秘密保護法、集団的自衛権行使の限定容認も論戦の主要なテーマになった。国論を二分する論争を決着させる意味合いが今回の選挙にはある。それほど重要であるということを有権者には自覚してもらいたい。

 首相にとって意外だったのは、選挙戦中盤になって野党側が改憲をテーマに挙げ出したことではないか。自民単独あるいは自公で3分の2を獲得する可能性があるとの予想がマスコミの世論調査から出ると、維新の党・江田憲司共同代表は「3分の2を超えると憲法改正も視野に入ってくる」などとし自民党を牽制(けんせい)。他の野党も改憲反対の主張を強めた。

 首相は1日の党首討論で「本番は国民の投票で決まる。まずは党で国民運動を展開していきたい」と控えめな発言をしていたが、改憲を前面に出して堂々と戦うべきだったろう。首相には選挙結果を踏まえ、次期参院選をにらみつつ新たな改憲戦略を練ることが求められる。

国の針路を見定める時

 いよいよ国の針路を見定めるべき時を迎える。安倍路線を支持するのか、それとも野党が訴える道に進むのか。

 人物に対する評価もあろうが、政党の公約集も読み比べた上で最終的な選択をしてもらいたい。

(12月14日付社説)