信任踏まえ改憲戦略策定せよ


政治部長代理 武田滋樹

 安倍晋三首相が消費再増税の延期と自らの経済政策「アベノミクス」の是非を問うとして仕掛けた解散・総選挙で自民、公明両党が圧勝した。選挙戦の結果は「安倍路線」をトータルに信任したものだ。公約した政策を謙虚かつ大胆に実行し、「誇りある日本、世界の中心で輝く日本」を取り戻すよう前進してもらいたい。

 当面の第一の関門が経済再生、財政再建であることに異論はない。ただ留意すべきは、選挙での圧勝にもかかわらず、有権者がもろ手を挙げてアベノミクスを歓迎したわけではないことだ。野党、特に第1党の民主党が、最初から政権交代を断念して代案も示さないまま批判に終始したため、いまだ景気回復を実感できていない有権者も恵沢を全国津々浦々に行き渡らせるには「この道しかない」と訴える首相に期待をかける以外になかった。

 今回、消費再増税の延期にも信任を得たことで、政権運営の重荷が軽くなったことは確かだろう。増税の影響を受けることなく来年春の統一地方選と再来年夏の参院選に臨むことができるためだ。10%に増税される平成29年4月までの3回の春に賃上げの恵沢を拡大することに専念すれば、それが最高の選挙対策になる。それだけに政府・与党の責任もまた大きくなることを肝に銘ずるべきだ。

 今回の選挙で首相は憲法改正について積極的発言を控えていたが、結果的に衆院で2期連続して改憲の公約を掲げた自民、維新の党、次世代の党と「加憲」の公明党が、改正原案の発議に必要な3分の2を上回る議席を占めることになった。改憲のための改正国民投票法は今年6月に施行されており、あとは参院で改憲勢力が3分の2以上の議席を占めれば、改憲が現実味を帯びてくる。公明をさらに説得する努力は当然必要だが、それとともに、28年夏の参院選のタイミングで「改憲」を旗印にした衆参ダブル選挙に持ち込むなど、改憲戦略の策定を急ぎ、首相が「歴史的使命」と自覚する改憲を現実のものにすべきである。

 来年の通常国会では、安全保障、地方創生、エネルギー政策、教育再生などの重要課題も控えている。首相は「安倍路線」への信任を踏まえ、謙虚さを失わず、リーダーシップを発揮して首相の訴えてきた「この道」を邁進(まいしん)してもらいたい。