衆院選結果、政権選択に値する野党再建を
第47回衆議院選挙の全議席が確定し、自民・公明の与党が合わせて326議席を獲得して公示前と同じ勢力を得た。安倍晋三首相が衆院解散当初に表明した「過半数」という勝敗ラインをはるかに上回り、有権者は首相の経済政策「アベノミクス」をはじめとする政策の推進に力を与えた。対する野党は課題を浮き彫りにした。
共産の議席増を許す
野党の問題は政権選択の選択肢を示し得なかったことだ。投票率は戦後最低の52・66%まで低下し、共産党の議席増という現象まで招いている。その意味で、野党第1党の民主党の2年間は有権者に積極的には評価されなかったと言える。
無論、共産党に投票した有権者がすべてイデオロギーの共産主義を支持したわけではないだろう。革命政党の本質を隠して消費税増税はじめ安保・原発への反対や「護憲」の装いにより批判票を取り込み、8議席から21議席に増えたのは、民主党をはじめ他野党の力量が欠けていたからだ。
民主党は前回の2012年衆院選から2年を経たにもかかわらず、小選挙区の全選挙区に公認ないし推薦する候補を擁立することができなかった。この間、党内論議を経て穏健中道路線という護憲的な政党へカーブを切った。議員減少により支持労組の影響が増した結果だ。
共産党に追随して「安倍首相の暴走を止める」と主張したが、集団的自衛権問題の背景にある我が国周辺の安全保障上の課題に対する認識に乏しかった。労組受けする「分厚い中間層」という掛け声も、有権者全体には響かなかった。
総じてアベノミクスを掲げ「この道しかない」と訴える首相に対抗する迫力がなかったと言えよう。
また、「第三極」と期待された日本維新の会は分裂、みんなの党は分裂を経て解党、双方の旧メンバーの一部が合流した維新の党は求心力を失った。
共産党は往年の組織政党であり、小選挙区には自民を凌(しの)ぐ292選挙区に候補者を立てたのに対し、民主党は178、比例と合わせても過半数に満たない198候補だった。
議席が伸びたのは「第三極」が自壊したからだ。維新の党が77選挙区擁立にとどまり、前回の日本維新の会151から大幅に減じたため、民主党の小選挙区得票率は264選挙区に候補者を擁立した前回の22・8%とほぼ同じ22・5%だ。
首相が今回、解散に踏み切った背景には、政権に不利な経済統計、女性2閣僚の辞任があった。それでも民主党が100議席にも至らなかったのは、早々に解散はしないという油断とともに、海江田万里代表の落選に象徴される通り、党指導部の魅力のなさがある。
政策に磨きをかけよ
維新は混乱を経ながらも1議席減にとどまり、逆風でも比例で838万票を得ている。さらに政策に磨きをかけ、改革政党となることを期待したい。
民主党は代表が交代するが、維新は国家観や安保政策で通じる民主党内保守派と連携し、政権選択に値する健全野党再建を推進すべきである。
(12月16日付社説)