デフレ脱却に知恵を絞れ


 「アベノミクス解散」を受けた衆院選も後半戦に突入する。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の継続か転換か。各党党首の遊説にも熱がこもる。

 日本経済が抱える主要な課題は、経済再生と財政健全化である。いまだ途上の両課題克服に向け、選挙戦を通じて、各党は知恵を絞り有効な政策を競い合ってほしい。

 4月の消費増税が誤算

 今回の衆院選は、経済面ではアベノミクスの中間評価を問うもの。アベノミクスはデフレ脱却を目指した、大胆な金融緩和と機動的な財政政策、民間活力を刺激する成長戦略の「三本の矢」が柱である。

 2年前までの日本経済は、デフレが続き、行き過ぎた円高と東日本大震災によるダメージが色濃く残り、民主党政権による「決められない政治」もあって閉塞状況にあった。それを打破したのが、アベノミクスの第1の矢、すなわち、日銀の「異次元」の金融緩和である。

 円安・株高が劇的に進行し、当初こそ期待先行だったが、好調な企業収益などによって景況感が徐々に改善し、雇用拡大・賃金上昇にもつながっていった。財政面では震災復興もあり補正予算を組み、公共事業を中心に拡張的な政策をとったことで、デフレ脱却の道を確かに歩みつつあった。

 安倍晋三首相が遊説で語るように、雇用や賃金などの面で民主党政権では難しかった成果を上げたと言える。

 誤算は4月からの消費税増税である。第3の矢、成長戦略のもたつきも確かにあるが、性質上、効果が表れるのに時間がかかる。また、もともと期待過剰だったと言えなくもない。デフレ経済では企業経営者が強気の計画を立てにくいからである。デフレ脱却が最優先であるゆえんである。

 製造業の海外生産が進み、円安でも輸出が伸び悩んでいることも誤算であるが、影響が大きかったのは消費税増税である。デフレ脱却途上での増税はその勢いを削ぎ、消費不振を長引かせているのである。

 解散の契機となった10%への消費再増税の先送りは当然だが、問題は再増税(2017年4月予定)までに経済再生、デフレ脱却をどう実現するかである。

 年々増加する社会保障費への対応は急務であるが、米財務省報告が警告したように、財政健全化を急いで増税に走れば、縮小均衡に陥り、その結果、デフレ脱却は果たせず財政健全化も進まなくなる。

 自民党はアベノミクスの継続を訴えるが、勢いを失いかけている経済をどう再生させ、また金融緩和による過度の円安がもたらす消費や内需依存企業への悪影響をどう緩和するのか。都市圏と地方、大企業と中小企業の間に広がる格差にどう対処するのか。

 アベノミクスの転換を訴え、「豊かな中間層の復活」を主張する民主党は、それをどう実現するのか。与党経験のある責任政党として整合性ある政策を求めたい。

 各党は切磋琢磨せよ

 投票まであと1週間。各党とも政策で切磋琢磨し、日本経済の再生に尽くしてほしい。

(12月8日付社説)