沖縄知事選、辺野古移設を粛々と進めよ
沖縄県知事選で米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設に反対する翁長雄志・前那覇市長が現職の仲井真弘多氏を破って当選した。この結果は民主党政権が「最低でも県外」と唱え、不毛の感情論でわが国の安全保障と沖縄の発展を損ねた記憶と重なる。
懸念されるのは翁長氏が辺野古移設反対だけを掲げ、沖縄の未来ビジョンを曖昧にしたことだ。これでは政治停滞を招いた民主党政権の二の舞となろう。安倍内閣は辺野古移設を粛々と進めるべきだ。
海洋支配を強行する中国
想起すべきは沖縄の地政学的な位相だ。わが国のシーレーン(海上交通路)の要衝を占めるばかりか、その160の島々を結べば本州の3分の2に匹敵する一大海洋圏を形成する。それだけに国際安保環境の変化の影響をもろに受ける。
中国は海洋を「青い国土」(李克強首相)と称し、経済発展を背景に軍事力を強化して「核心的利益」を海洋にまで押し出し、沖縄県・尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返している。昨秋、中国は同諸島を含む東シナ海に「防空識別圏」を設定し、中国軍機の進出も目立つ。
南シナ海では今年初め、海版「識別圏」を設け、外国船の漁業操業に許可が必要だとして「九段線」(南シナ海全域を領海とする9本の線)の実効支配に動き出した。ベトナムが主張する排他的経済水域(EEZ)では海底油田の開発を強行した。これが中国の海洋進出の現実だ。
沖縄も予断を許さない。小笠原諸島などで中国漁船がサンゴ密漁を繰り返しており、その矛先がいつ沖縄に向けられても不思議ではない。こうした安保環境の変化を抜きにして沖縄の基地問題は語れない。
1996年に日米両政府は普天間飛行場の返還に合意し、名護市辺野古への移設計画を進めてきた。移設は日米同盟の一層の強化に不可欠だ。住宅街が迫る普天間飛行場の危険性を除去し、同時にわが国と東アジアの安全保障を確固たるものにする。さらに跡地利用や新基地建設で沖縄経済の飛躍的発展を期す。この三つの課題に応えるのが辺野古移設にほかならない。
すでに県は移設を前提に「沖縄21世紀ビジョン」を推し進めてきた。宜野湾市も返還後の再開発に備え、さまざまな施策を練り、同地域のみならず沖縄全体の牽引車の役割を担おうとしている。
一方、沖縄本島の北部地域は山林地が多く、産業が乏しいため都市の多い南部との格差が著しい。そこで辺野古移設をテコに北部発展を図ろうと、地元は街づくり推進を条件に辺野古移設に賛成している。名護漁業協同組合も圧倒的多数で埋め立てに同意した。
翁長氏は未来を熟考せよ
こうしたトータルな視点から仲井真知事は辺野古沖の埋め立てを承認した。8月から始まった工事は公有水面埋立法に基づき、正当な手続きを踏まえて行われているものだ。安倍内閣は辺野古移設を進めていく必要がある。翁長氏は左翼勢力の反米運動に躍らされず、冷静かつ大局に立ち、沖縄の未来を熟考すべきだ。
(11月17日付社説)