普天間移設に弾みつけたい沖縄県知事選
11月16日の沖縄県知事選に現職の仲井真弘多知事が3選を目指し立候補することを表明した。自民党本部も支援する方針だ。これに対して米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する翁長雄志那覇市長が出馬する予定で普天間移設問題が最大の争点になる。政府はすでに移設へと動き出しているが、それに弾みをつけたい。
首相の約束の説明必要
自民党本部の仲井真氏支援表明までに時間がかかっているのは、知事選で必ず勝たなければならないからだ。党独自で行った調査で同氏の劣勢が伝えられ、与党公明党の沖縄県本部が県内移設に反対して同氏支援に難色を示していた。
ところが、他に候補者が見つからず仲井真氏本人が先手を打って立候補を表明。自民党沖縄県連も同氏の推薦を決めたため、他の選択肢はないと党本部が判断したものとみられる。
仲井真知事は昨年暮れ、辺野古沿岸部の埋め立て承認を表明した当事者である。安倍晋三首相も仲井真知事に対して①普天間飛行場の5年以内の運用停止②地位協定の見直し③キャンプ・キンザーの7年以内の返還④オスプレイの分散化――の4項目を約束した。政府・与党は同知事を相手に着々と移設作業を進めていくのが筋である。
肝要なのは、首相の約束について県民一人ひとりに説明していく努力だ。自民党県連はもとより、それに懐疑的な公明党県本部にも十分な対応が望まれる。今年1月に行われた名護市長選では、地元の漁協らは基地との共栄を容認していたにもかかわらず、公明党があまり動かず移設推進派敗北の要因の一つとなった。それを繰り返さない工夫が必要である。
自民党と公明党は、安保環境の急変により集団的自衛権について長時間議論をし、「日米安保体制の実効性を一層高め、日米同盟の抑止力を向上させることにより、武力紛争を未然に回避し、わが国に脅威が及ぶことを防止する」ため集団的自衛権行使の限定的容認の閣議決定をしたのである。
米海軍首脳が明らかにした話では、中国が昨秋、石垣市の尖閣諸島のみならず近隣の島々の奪取をも想定した大規模な軍事上陸演習をしていた。オバマ米大統領が4月の来日時に、尖閣に対して「日米安保条約第5条を適用する」と発言した重みと緊迫した東シナ海をめぐる情勢について、公明党本部が地元県本部に積極的に説明し説得すべきである。
一方、普天間飛行場の県外移設を主張した後、県内移設容認へと転換した民主党本部も、本来であれば移設推進で戦うべきだが、移設反対の翁長氏の支援を検討しているという。「県外移設」を堅持する県連とのねじれ状態を解消したいのだろうが、安保の根幹の問題を疎(おろそ)かにするようでは国政政党失格だ。
移設問題に決着を
日米両政府が普天間飛行場の全面返還で合意してから18年になる。今秋の知事選で移設問題を決着させ、年末までに改定する日米防衛協力のための指針(ガイドライン)の内容充実を図るとともに、地元の基地負担軽減に尽力すべきである。
(8月14日付社説)