特殊詐欺、新手口への注意喚起強めよ
身内を装って現金をだまし取る「おれおれ詐欺」など「特殊詐欺」の被害に歯止めがかからない。全国の警察が今年上半期(1~6月)に把握した被害総額が268億2950万円となり、昨年同期より56億円増えたことが明らかとなった。
振り込みから手渡しに
警察も注意喚起と啓発のキャンペーンを行っているが、効果は十分でない。地域や各機関、さらにメディアなど社会全体で防止キャンペーンを強化する必要がある。
被害が最も多かったのが、息子や孫を装って「会社の金を無くした」などと助けを求める「おれおれ詐欺」で、7億円増の80億円。次が「値上がり確実」などとうその投資話を持ち掛ける「金融名目詐欺」の73億円となっている。3番目が「架空請求詐欺」の68億円で44億円増加しており、特殊詐欺全体の増加分の79%を占めた。
一方、被害の形態でみると、最も多いのが現金手渡し型で、被害額120億4100万円は総額の44・9%を占めた。次いで、郵便サービスのレターパックや宅配便で現金を送るよう指示する現金送付型が93億9000万円で35%。この手口は架空請求詐欺に多い。
反対に振り込み型は52億1400万円で、前年同期と比べて4億1900万円減っている。全体に占める割合でも26・5%から19・4%に低下し、2割を切った。金融機関の一日の利用限度額が引き下げられ、犯行に悪用された口座を凍結するなどの対策が取られたことによるものだ。
「振り込め詐欺」は特殊詐欺の代名詞となってきたが、いま詐欺の手口は、現金手渡しや送付型が中心であることを、もっと広く周知する必要がある。
これらの詐欺は、ほとんどが電話を使っている。どのようなものであれ、心当たりのない電話での支払い請求は全て疑ってかかるべきである。
一方で金融機関職員やコンビニの店員が被害者に声を掛けて阻止した金額も135億円ある。これは実害の半分に相当する額だ。店員の一言が、冷静な気持ちを失っていた被害者の目を覚まさせた。日頃の注意喚起がいかに重要かということを示している。
被害者を年齢別に見ると、やはり高齢者が圧倒的に多い。孫や息子を装って金をだまし取る「おれおれ詐欺」は、老人を狙った詐欺であり、肉親の情や、人を疑うことの少ないという日本社会の美質につけ込む卑劣な犯行だ。
このような犯罪に対して、我々はもっと強い憤りを持って、監視の目を光らし、撲滅に協力すべきである。
若者も無縁ではない
特殊詐欺の被害は若い世代にも及んでおり、油断してはいられない。架空請求の被害は10代後半から多発し、20代がピークとなっている。
架空請求では、トラブルを演出して「解決金」などをだまし取る手口が多いという。インターネットを利用する機会の多い若者は、こうした犯罪と隣り合わせという自覚が必要であり、教育現場でも日頃から注意を喚起しておくべきだ。
(8月13日付社説)