奇しくも「媚中派」が並んだポストの「ポスト岸田」政治家ランキング

国会での岸田総理

“プロ目線”での人選
 「人の話は聞くが、決めることは不得意だ」「決断が空回りし、官僚たちを右往左往させている」―。岸田文雄首相への評価である。

 政権が発足して2カ月が経(た)つが、ワクチンの追加接種、10万円給付など国民に直結する政策で“蛇行”ばかりが目立っている。そんな中、早くも“岸田後”を特集する週刊誌が現れた。週刊ポスト(1月1、7日号)の「『ポスト岸田』に推せる政治家 推せない政治家」の記事だ。

 岸田政権が短命か長期かは置くとして、「ポスト岸田では、アフターコロナの社会のあり方に明確な進路を示し、実行できる本格政権の登場が望まれる」として、「ベテラン政治ジャーナリスト11人」が「自民党内で“将来の総理・総裁”と見られている8人」と、立憲民主党の泉健太新代表、日本維新の会副代表の吉村洋文・大阪府知事を加えた10人を総理候補に挙げて点数を付けたものだ。

 この時点で編集意図は「次の首相に誰が相応(ふさわ)しいか」というアンケートではない。自民党内で総理総裁候補と目されている人物に対する評価であって、“プロ目線”の人選ということだ。だから世間一般の感覚とは違って、あくまでも政治工学、永田町力学から見て「明確な進路を実行できる本格政権」を担える人選ということになる。

第一条件は派閥領袖

 自民党から選ばれた8人で上位となったのが、1位茂木敏充幹事長(16点)、2位林芳正外相(15点)、3位福田達夫総務会長(7点)らで、なるほど、いずれも総裁選に立つ条件のある人物ばかりが並んだと分かる。

 つまり、現在の総裁公選規程10条の「20人の推薦人」を集められる条件を持つということだ。茂木氏は竹下派を引き継ぎ、林氏も岸田派の次の指導者と目されている。福田氏も清和会(安倍派)はもともと、祖父の福田赳夫元首相が創設した派閥だ。

 4位に6点で河野太郎広報本部長がつけているが、まだ派閥の領袖(りょうしゅう)になる目途(めど)が立たない。人気があるのに1点の高市早苗政調会長は、自身で推薦人を集められず、派閥にも属していない。5位の野田聖子特命担当相(6点)でさえ推薦人を集めるのに汲々(きゅうきゅう)としている。自民党総裁になろうとすれば派閥の領袖にならなければならない(「菅義偉ケース」は稀有なのだ)。この辺が“プロ目線”の所以である。

 では、それだけか。政治評論家の小林吉弥氏は「政策立案能力と実行力」を挙げた。政治評論家の有馬晴海氏は、だから「高市氏、野田氏、河野氏を推した」し、その面で「この3人はいつ総理に就任してもいい準備ができている」と評価する。

 派閥と政策に加えて、現在の閉塞(へいそく)状況を打破する力を求めるのは元自民党政調会調査役で政治評論家の田村重信氏だ。「日本の停滞感をいかに解消するかがこれからの総理に求められる資質」として、河野氏の「突破力、発信力」に期待を寄せた。

 茂木氏が1番になったのは政調会長、外相などを歴任して、経済、金融、外交などで「最も安定感のある政治家」と評価されたから。田村氏は「これで名実ともに総理・総裁となる準備が整ったと言えます」といち推しだ。

若手のホープは明暗

 若手のホープとして明暗を分けたのが福田総務会長と小泉進次郎元環境相(8位0点)。福田氏について元共同通信政治部次長で政治ジャーナリストの野上忠興氏は、「人当たりが柔らかく、よく意見を聞く。だから周りに人が集まる。総理としての器を感じる」と評価する。一方、小泉氏は「深い理解がない。勉強不足で、哲学もない。向こう受けを狙った演説」(元テレビ朝日政治部長でジャーナリストの末延吉正氏)と厳しい評価を受けた。

 このランキングを見て、保守系のSNSでは上位に「媚中(びちゅう)派が顔をそろえた」と酷評が並んだ。確かに高市氏などからみれば「親中派」と言われる。だが、現実の政治、外交は違う。周りの邪推は本質を映さない。

 ポスト岸田の動きが表面化するのはいつのことか。来夏の参院選の結果による。

(岩崎 哲)