民主党大会、国政を任せられるかが問題だ
民主党大会が行われ、安倍政権との対決を前面に打ち出す2014年度活動方針などが採択された。「国民の信頼回復は道半ば」という自覚は必要だが、問われているのは野党第1党の同党に国政を任せられるかどうかである。
政権への対決姿勢前面に
残念ながら、下野して1年経(た)った民主党は政権担当能力が低下しているとしか思えないのが実情だ。海江田万里代表は「今や暴れ馬となった安倍政権と厳しく対峙(たいじ)する」と訴えたが、対立軸は明確になっていない。
民主党は活動方針で政策体系の具現化に向け、憲法、エネルギー、安全保障、行財政改革、経済連携・農業再生、社会保障の六つの総合調査会を活発化させることを謳(うた)っている。しかし、手始めに党大会で集団的自衛権についての見解を示す方針だったものの、議論が噛(か)み合わず先送りになった。
政権担当時には「30年代に原発稼働ゼロ」を掲げたが、当面は安全性が確認された原発を活用する方向だった。それにもかかわらず、民主党は東京都知事選で「即時原発ゼロ」を唱えた細川護熙元首相を事実上支持した。一方、同党の支持団体の連合は舛添要一元厚生労働相の支援に回り、分裂状態に陥った。
また、民主党政権は「平成の開国」として環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を訴えたが、下野して自民、公明と攻守所を変えると「生産現場の不安を共有」する対応に変わった。これでは「政権再奪取」への政治決戦と位置付ける来年春の統一地方選では、目先の票集めを優先する場当たり的な対応に終始することになろう。
この状態で安倍政権への対決姿勢を打ち出しても、単なる「反対野党」と見なされ、国民の支持は得られまい。活動方針ではっきりしているのは、特定秘密保護法廃止運動ぐらいのものだ。しかし、民主党も国家安全保障会議(日本版NSC)の創設には賛成していたのであり、秘密保護の必要性は情報公開法の改正を前提に認めている。「廃止」要求では秘密保護自体に反対する運動と混同されよう。
党内で意見が割れて政策が曖昧になるのは、議論が多くて結論は出ないという党の体質が改善されていないからだ。「いのち、雇用、暮らしを守る」という聞こえのいい言葉で政権を批判するのは、野党としてはやりやすいに違いない。
しかし、与党が緊張感を持って政権運営に当たるには、政権を競い合える野党の存在が不可欠だ。民主党政権は尖閣問題や東日本大震災への対応のまずさで国民の信頼を失った経緯がある。将来再び政権を担った時に、こうした問題が生じても迅速かつ適切に対処できるよう、基本的な政策について党内で意見を統一すべきだ。
統治能力高める改革を
同党の自負するところは、政治改革を追求した政党再編により結集したことである。二大政党の潮流に乗って一度は政権交代を果たしたが、同党が政権担当能力に乏しかったことが政治改革を挫折させた。
政権批判の前に、まずは党改革によって国家統治の能力を高めてほしい。
(2月12日付社説)