デジタル法成立 行政効率促進と安全の徹底を


 菅義偉首相の肝いりの公約である内閣直属の「デジタル庁」創設を柱とするデジタル改革関連6法が成立した。新型コロナウイルス対策で浮上した縦割り行政の障壁や手間と時間のかかる手続きの課題などをオンライン化の推進によって解消し、効率的な対応が取れる改革を実現してほしい。

 9月にデジタル庁新設

 政府の各省庁や各自治体と国民をつなぐ諸手続きや行政サービスにおける情報のやりとりがオンラインで簡素化されるならば、迅速な対策を取ることができるのは自明のことだが、コロナ禍に直面してようやく改革の道が開かれた。

 9月に新設されるデジタル庁は、首相をトップとする行政のデジタル化の司令塔になる。わが国の国際競争力の強化と利便性の向上を目的とし、デジタル社会の実現を目指すことから、人々の移動を必要としないネットワークが、行政をはじめあらゆる分野で活用されていくことになる。

 デジタル庁は民間募集100人を含む500人体制で発足するが、高度な能力を有する専門家の育成は必須課題であり、公教育においてもデジタル部門の教育を充実させていく必要に迫られよう。同時に、高齢者や生活困窮者など端末を手にすることができない事情がある人々など、デジタル格差に対応する行政の代行サービスも視野に置く必要がある。

 コロナの感染拡大をめぐっては、行政窓口の対面手続きの場においても対策を必要とされるほか、職場の「密」を回避するため公務員の出勤人数が制限されたことで行政処理能力の低下が問題となっている。また、来場者にも社会的距離を取る必要から受け入れ人数の制限が加えられるのが実情だ。

 昨年の緊急対策だった一律10万円の給付金の手続きでも、市区町村からの書類郵送と郵送による申請、オンライン申請に対する事務処理に時間がかかり、政府が4月に方針を決定したにもかかわらず実際の給付は自治体によってまちまちで、6月以降にずれ込んだ教訓もある。

 行政サービスのオンライン化の際に政府が推進しているマイナンバーカードの普及は、取得に応じる国民の協力が欠かせない。申請数は人口の4割にとどまっており、来年度末までに国民ほぼ全てに普及させる目標に向けて努力すべきだ。

 デジタル化の国際競争力は、特に行政において、ようやく首相がリーダーシップを取って改革を進めるところであり、後れは否めないだろう。

 他国依存招かぬ競争力を

 競争力のなさは他国依存を招き、安全対策上の問題もある。厚生労働省が米企業提供のクラウドサービスをワクチン接種の管理業務に利用したところ、システム障害の影響を受けた事例や、個人情報が中国企業から見える状態になっていた無料通信アプリ「LINE」を公務で利用していた例など対策や改善が必要だ。

 さらに、中国のハッカー集団がわが国各機関にサイバー攻撃をしていたと公表されており、サイバーセキュリティーに万全を尽くしてほしい。