衆参3選挙全敗、首相は猛省し信頼回復図れ


 菅義偉政権になって初の国政3選挙が行われた。自民党は候補者を立てなかった衆院北海道2区補欠選挙と与野党が激突した参院長野補選、参院広島再選挙の全てで敗北した。今秋までに実施される衆院選の前哨戦とも位置付けられていただけに政権への打撃は大きい。

 菅首相は結果を重く受け止めて猛省し、信頼回復に全力を挙げるべきだ。さもなければ求心力を強化し総選挙に臨むことはできない。

 国民の目は甘くない

 北海道補選は、鶏卵生産会社から賄賂を受け取ったとして収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農林水産相(自民離党)の議員辞職に伴うものだ。負ければ政権に打撃になると判断した自民党本部は「信頼回復を優先する」との理由で早々と候補者擁立を見送り「不戦敗」となった。候補者を立てられなかったというのが実情である。

 他方、長野補選と広島再選挙は与野党対決の構図となった。ただ、長野は立憲民主党候補者の実兄・羽田雄一郎元国土交通相の新型コロナウイルス感染による急逝に伴う「弔い選挙」だったことから、辛うじて形成された野党共闘ではあったが、優勢に選挙戦を展開。政府・自民党の後手に回ったコロナ対策への鋭い批判がそのまま票につながる形となった。

 最も注目されたのは、自民党本部が唯一勝利する可能性があると期待した参院広島再選挙の行方だった。広島は衆院7小選挙区のうち五つを自民が議席を持つ「保守王国」だ。3戦全敗でなく、1勝できれば菅首相や二階俊博幹事長の責任を回避できると読んでいた。それ故、広島でも与党候補が敗北したことの意味は大きい。

 再選挙になったのは、買収事件で有罪が確定した河井案里議員の当選無効によるものである。公職選挙法違反罪で公判中の元法相である夫・河井克行被告が無罪主張を一転させ、地元議員らへの現金供与を買収と認め衆院議員を辞職したこともあり、「政治とカネ」が最大のテーマとなった。

 疑問だったのは、菅首相が選挙区に入らず先頭に立って応援しなかったことだ。首相のスケジュールは新型コロナ対策や米国訪問などで過密であったろう。しかし、党本部から河井夫妻に渡した1億5000万円の使途の解明ができないことに触れられたくないのが理由だったとすれば、政治不信を払拭(ふっしょく)できるわけがない。

 自民党広島県連会長の岸田文雄前政調会長は「自民党を変えていかねばならない」と訴えた。だが、それをどう実行していくのか。「政治とカネ」の疑惑に国民の目が決して甘くないことを今回の選挙は改めて示したのである。自民党には他の選挙区でも衆院議員の選挙資金疑惑が生じているが、決して疎(おろそ)かにできないはずだ。

 真摯かつ謙虚に政治を

 首相が政権基盤を強化し国民の支持率を上げるために求められているのは「政治とカネ」の問題で真相の徹底解明と再発防止策の提示を真摯(しんし)かつ謙虚に行うことである。それが首相の目指す「国民のために働く内閣」による政治でもあるはずだ。