日本学術会議 国益に資する抜本改革を
日本学術会議(梶田隆章会長)は総会で、推薦した会員候補のうち6人の任命が菅義偉首相に拒否された問題について「即時任命することを要求する」とした声明を決定した。
しかし学術会議は内閣府の特別の機関であり、会員の任命権は首相が持つ。この問題にいつまでもこだわることは理解に苦しむ。
独立に慎重姿勢示す
首相が任命を拒否した理由は明示されていない。ただ、6人はいずれも安倍前政権下で安全保障関連法などに反対した。
学術会議は10億円以上の税金で運営されており、会員は非常勤の特別職の国家公務員だ。日本の安全を守るための法整備に反対すれば、任命を拒否されても仕方があるまい。
任命拒否に対しては「学問の自由の侵害」との批判もある。だが、安保関連法に反対すること自体が禁じられたわけではない。反対する人物が学術会議の会員に任命されるか否かは別の問題である。
一方、学術会議は政府の要請で検討してきた組織改革について、特別の機関と位置付けられた現行の形が「国を代表する学術機関の役割を果たすのにふさわしい」とする報告書を決定。声明と報告書を井上信治科学技術担当相に手渡した。
学術会議に関する自民党プロジェクトチーム(PT、座長・塩谷立元文部科学相)は昨年12月、学術会議の在り方について「独立した新たな組織として再出発すべきだ」とする提言を政府に提出。井上氏は「(PTの)提言を尊重してほしい」と梶田会長に求めていたが、報告書では独立に慎重姿勢を示した。
しかし、これまでの学術会議の言動を見る限り、国の機関としてふさわしいか疑問が残る。特に2017年3月の「軍事的安全保障研究に関する声明」では、防衛省が将来の装備品開発を目指して研究者に資金を提供する「安全保障技術研究推進制度」について「政府による介入が著しく、問題が多い」と指摘している。
各国の技術革新が急速に進む中、防衛省独力での研究・開発には限界がある。大学など研究機関にも裾野を広げ、将来的に防衛装備にも応用可能な民生技術を採用することが同制度の狙いだった。覇権主義的な海洋進出を強める中国や、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威が高まる中、抑止力向上につながる技術の研究・開発を行うのは当然である。
しかし、学術会議は1950年と67年に軍事目的のための科学研究を行わないとの声明を発表している。2017年の声明も、この二つの声明を継承したものだ。声明の影響によって同制度への応募数が大幅に減少し、国益を損ないかねない事態となっている。
こうした姿勢こそ学問の自由を侵害するものだ。学術会議に税金を投入することは無駄遣いだと言わざるを得ない。
共産党の浸透を防げ
学術会議に対しては、日本共産党が長年にわたって浸透工作を進めてきた。政治的に中立の立場を堅持するためにも、学術会議は組織の在り方を含めた抜本改革を行う必要がある。