まん延防止追加、緊急事態宣言に躊躇は不要
新型コロナウイルス感染拡大抑制のための「まん延防止等重点措置」がきょうから埼玉、千葉、神奈川、愛知の4県に拡大される。すでに対象地域となっている大阪府は、感染拡大が止まらず、吉村洋文知事は緊急事態宣言の発令を政府に要請する考えだ。
猛威を振るう変異型
重点措置の対象地域は、埼玉県がさいたま・川口の2市、千葉県が市川・船橋・松戸・柏・浦安の5市、神奈川県は横浜・川崎・相模原の3市、愛知県が名古屋市となっている。期間は5月11日までで、帰省や旅行が増える大型連休期間を含む。加藤勝信官房長官は「基本的な感染対策に加え、都道府県をまたがる移動の自粛もお願いしたい」と呼び掛けている。
首都圏の3県は東京都と同じ生活圏にあり、感染拡大が予想され、初めから含むべきだったとの声もある。状況を見ながらの対応はやむを得ないだろうが、対策が小出しになっている感は否めない。もっと積極的な攻めの対応が必要ではないか。
感染状況が最も深刻なのは大阪府だ。新規感染者は18日に過去最多の1220人に達し、6日連続で1000人を超えた。まん延防止等重点措置が適用されても効果が出ていない。
「感染が非常に厳しい状況が続いている。医療提供体制は危機的状況で、緊急事態宣言の要請をすべきだと判断した」と吉村知事は述べ、飲食店にとどまらず百貨店やテーマパークなど幅広く休業要請を行う考えだ。大阪府に緊急事態宣言が発令されれば3回目となるが、必要な状況と判断された場合、政府は躊躇(ちゅうちょ)すべきではない。
大阪府の感染急拡大は、強い感染力を持つ「英国型」の変異ウイルスの蔓延(まんえん)に原因がある。大阪や兵庫では、新規感染者のうち変異型と判明した人の割合は約8割に達している。東京は28%(4月5~11日)だが、愛知県(45%)などとともに急速にその割合が増えている。
変異型によって、東京より人口の少ない大阪府でこれだけの感染急拡大が起きたことを見れば、変異型が東京でも猛威を振るうことは十分予想される。小池百合子東京都知事は「変異型ウイルスも多く見られ、病床確保数、医療提供体制の動向や人流の傾向などを踏まえると、先手先手の対応が不可欠だ」とし、緊急事態宣言の要請を検討する考えを示した。当然だろう。
新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は、現状について「『第4波』と言って差し支えない」と明言。菅義偉首相も「全国的な蔓延状態となりつつある」との認識を示した。感染力の強い変異型に対抗するには、これまで以上に強力な対策を取る必要がある。法律的にさまざまな制約のあるわが国では、緊急事態宣言の発令が最大の方法だ。
可能な限りの対策講じよ
第4波の推移次第では、東京五輪・パラリンピック開催への影響も避けられないとの見方もある。参加選手の感染対策に当たる医療従事者を確保する必要があり、患者の治療やワクチン接種との両立が困難になる恐れがあるからだ。今は第4波を抑え込むために可能な限りの対策を講じる時である。