日米韓安保協議 文政権の連携意志が問われる


 バイデン米政権発足後、初めてとなる日米韓3カ国の対面による安全保障担当の高官協議が米国東部メリーランド州にある海軍士官学校で開かれた。言うまでもなく最大の議題は北朝鮮の非核化だが、日米と足並みを揃(そろ)えていない韓国・文在寅政権は、今後どう連携を保とうとするのかが問われている。北朝鮮は武力挑発路線をエスカレートさせており、万全の態勢を維持する必要がある。

 韓国外相が同時期に訪中

 協議には北村滋国家安全保障局長、米国のサリバン大統領補佐官、韓国の徐薫国家安保室長が参加した。協議後の共同声明によると、3者は北朝鮮の核・弾道ミサイルに懸念を表明し、北朝鮮非核化に向けた緊密な協力を確認した。

 北朝鮮非核化の実現にはバイデン政権が北朝鮮に強い圧力をかけ、一部の非核化措置で制裁解除に応じさせようとする金正恩朝鮮労働党総書記のしたたかな戦略に巻き込まれないことが肝心だ。3カ国連携はこの一点で足並みが乱れてはならない。

 しかし、残念なことに文政権の姿勢には疑問を抱かざるを得ない。

 北朝鮮が黄海と日本海に向け巡航ミサイルと短距離弾道ミサイルを発射した際、文政権は国連安全保障理事会の対北制裁決議に違反する点や露骨に韓国攻撃を示唆した挑発であったことなどを明確には糾弾せず、反応や抗議も遅かった。

 これは文政権が常々重視してきた戦略的に北朝鮮を刺激しまいという段階を超えた事態であったにもかかわらず、明らかに危機意識が不足していた。国内保守派から強い批判が上がったのは当然だ。

 協議と同時期に韓国の鄭義溶外相が訪中し、王毅外相と会談したことも腑(ふ)に落ちない。中国は今回の北朝鮮によるミサイル発射を受けた安保理の対北追加制裁に反対するなど、北朝鮮を非核化に向かわせるプロセスをむしろ遅らせてきた。3カ国が連携を確認しようという時、なぜ外交トップがわざわざ連携を快く思わない国に出掛ける必要があるのか。

 文政権は経済協力の必要性や南北関係改善に向けた協力取り付けのため中国との関係を重視しているのだろう。だが、安保は最優先課題であるはずだ。米中の狭間でバランスを取るような姿勢に終始すれば、結果的に米韓同盟や日米との安保協力は弱まる。こうした選択は果たして韓国の国益にプラスになるのか。再考を促したい。

 鄭外相の場合、米国との外務・国防閣僚協議(2プラス2)で、ブリンケン国務長官が一貫して「北朝鮮非核化」と発言したのとは対照的に、実存しない韓国内の戦術核などの撤収を含む「朝鮮半島非核化」という北朝鮮が好む表現を使ったことにも違和感を覚える。ブリンケン氏は韓国の対北融和路線に改めて驚かされたかもしれない。

 米朝対話の再開促す

 徐氏は協議後に別途行ったサリバン氏との協議で、米朝対話の早期再開を促したという。文政権が仲介役を果たして実現した見せ掛けの非核化交渉に、米国は間違っても応じるような愚を繰り返してはなるまい。