日米豪印首脳会談 結束確認の意義は大きい
日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国首脳が、初の首脳会談をテレビ会議方式で開いた。覇権主義的な動きを強める中国を念頭に、民主主義や法の支配などの価値観を共有する4カ国が結束を確認したことの意義は大きい。
中国念頭に協力深化
4カ国が発表した共同声明には、新型コロナウイルスワクチンの途上国供給や気候変動問題などで連携するため、三つの作業部会を設置することを明記。東・南シナ海で覇権主義的な動きを見せる中国を念頭に、海洋秩序を守るための協力を深める方針も表明した。
会談には菅義偉首相、バイデン米大統領、モリソン豪首相、モディ印首相が参加。4カ国は2019年から外相会談を3回開いてきたが、首脳会談に格上げした。
地域情勢をめぐり、菅首相は「中国による一方的な現状変更の試みに強く反対する」と非難した。中国は沖縄県・尖閣諸島の領有権を不当に主張し、尖閣周辺では中国海警船が領海侵入を繰り返している。
今年2月には中国海警局の武器使用権限を定めた海警法が施行され、このような挑発が激化することが懸念される。日本が米豪印との連携を強めれば、中国に対する抑止効果を期待できよう。
一方、インドも3000㌔以上の未確定の国境線をめぐって中国と対立している。昨年6月にはヒマラヤの国境地帯で軍事衝突が起き、45年ぶりに死者が出るなど緊迫した。
インドは、中国が巨大経済圏構想「一帯一路」の枠組みを利用して周辺国に浸透を図っていることにも神経をとがらせている。中国はパキスタンのグワダル港やスリランカ南部のハンバントタ港などの重要港湾で数十年に及ぶ運営権を取得するなど、インドを包囲する「真珠の首飾り」戦略を進めている。
豪州も安全保障分野で友好関係にある太平洋諸国で中国の影響力が強まっていることを警戒している。昨年11月には日米豪印の合同海上演習「マラバール」がインド沖で行われ、豪州は13年ぶりの参加となった。4カ国は中国を牽制(けんせい)するとともに、一帯一路の対立軸である「自由で開かれたインド太平洋」構想を推進することが求められる。
中国は影響力拡大のため、新型コロナの「ワクチン外交」も展開している。4カ国首脳がインドで生産したワクチンをアジアやアフリカの途上国に供給することで合意したことは、中国に対抗する上で重要だ。
バイデン政権は、中国を「21世紀最大の地政学的試練」に位置付け、対抗するために同盟国やパートナー国との連携、民主主義の価値観を重視している。ただ気候変動対策で中国との協調も目指すなど、トランプ前政権が敷いた対中強硬路線が後退する懸念も残る。
全体主義への対抗徹底を
中国は対外的には膨張政策を強め、国内では少数民族の独自の文化を否定する同化政策や、デジタル技術による「監視社会」構築を進めている。
民主主義国家の日米豪印は、全体主義国家の中国への対抗姿勢を徹底すべきだ。