日米首脳、同盟強化で中国に対抗を


 菅義偉首相がバイデン米大統領と電話会談し、日米同盟のさらなる強化を確認した。

 日米同盟は両国のみならず、地域全体の安定と繁栄に欠かせない。覇権主義的な動きを強め、平和を脅かす中国に共同で対抗すべきだ。

尖閣に安保条約適用表明

 バイデン氏の大統領就任後、日米首脳の会談は初めてだ。バイデン氏は、米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が沖縄県・尖閣諸島に適用されると改めて表明。「核の傘」を含む抑止力を提供することも約束した。

 中国海警船が昨年、尖閣周辺の接続水域に侵入した日数は333日に上った。領海侵入も24回に達し、日本漁船を追尾する事例も増えている。2月1日には中国海警局に武器使用を容認する「海警法」が施行される。バイデン氏が日米安保条約の尖閣適用を明言したことは、尖閣奪取を狙う中国への一定の牽制効果を持つだろう。

 また北朝鮮や中国の核戦力が増強される中、日本は米国の「核の傘」に頼らざるを得ない。日本は米国との同盟強化によって、抑止力の維持、向上に努める必要がある。

 バイデン氏は、日米同盟について「自由で開かれたインド太平洋における平和と繁栄の礎」と述べた。バイデン氏は昨年11月の電話会談で、安倍晋三前首相が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想を「繁栄し安定したインド太平洋」と述べたことで波紋を呼んだが、懸念を払拭(ふっしょく)した形だ。

 この構想は、アジア太平洋からアフリカに至る地域に、自由貿易、航行の自由、法の支配などの原則を定着させ、世界に平和と繁栄をもたらす「公共財」にすることをうたったものだ。南シナ海の軍事拠点化などで、こうした原則を軽んじる中国に対抗する狙いがあるが、「繁栄し安定した」では中国批判の意味合いが薄れてしまう。日米やオーストラリア、インドなどの民主主義国家による構想推進が求められる。

 バイデン政権は、トランプ前米政権の対中強硬策を継承する姿勢を示している。ただ前政権同様に、これまでの中国に対する関与政策が失敗だったと明確に認めているかは不透明だ。

 中国は昨年6月、香港の高度な自治を保障する「一国二制度」を骨抜きにし、香港への統制を強化する「香港国家安全維持法」を成立させた。民主派の逮捕が相次ぐなど、香港の自由と民主主義は深刻な危機に直面している。

 香港だけではない。中国のチベット、新疆ウイグル、内モンゴルの各自治区では、少数民族が弾圧され、独自の文化が奪われようとしている。人権を重視してきた米民主党こそが、こうした忌まわしい政策を糾弾すべきではないか。

台湾との連携強めよ

 中国の習近平国家主席は、台湾統一を目指し、武力行使も辞さない方針を示している。バイデン政権発足後も、2日間で30機近い中国軍機が台湾の設定する防空識別圏に一時侵入するなど、台湾に対する圧力を強めている。日米両国には台湾との連携を強めることも求められる。