EU外相理、日本は中国念頭に協力進めよ


 茂木敏充外相は欧州連合(EU)の外相理事会にオンライン形式で出席し、軍事、経済両面で影響力を強める中国をにらんで日本が推進する「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想の実現に向けた連携を呼び掛けた。

 欧州は、日本や米国と自由、民主主義などの価値観を共有している。日本はFOIP構想をめぐって欧州との協力を進めるべきだ。

 英独仏が艦艇を派遣

 茂木氏は海洋進出を強める中国を念頭に「インド太平洋地域では、東シナ海や南シナ海で見られるような安全保障に対する挑戦や、民主主義や人権といった基本原則への挑戦が存在している」と指摘。ルールに基づく秩序維持や地域の経済的結び付きの強化のため「日・EUで協力を進めていく」と表明した。

 FOIP構想は現在、日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国が推進している。欧州が加われば、航行の自由や法の支配など中国が軽視する価値観を地域に定着させる上で、心強い援軍となろう。

 茂木氏は今回、EU側からの参加要請で日本の外相として初めて外相理に出席した。背景には、欧州各国の対中姿勢が厳しさを増していることがある。

 ドイツは昨年9月、初めての「インド太平洋ガイドライン」を閣議決定。巨大経済圏構想「一帯一路」で途上国の債務負担が膨らむ現状も指摘するなど中国への懸念を表明した。ドイツは今年、日本に海軍のフリゲート艦を派遣する。中国を牽制(けんせい)するためだが、海外領土を持たないドイツが極東に艦艇を送るのは極めて異例だ。今夏にもドイツを出航する。

 フランスは2019年に公表した「インド太平洋国防戦略」で日本や米国、オーストラリア、インドなどとの関係を強化すると定めた。中国の膨張策を黙認すれば、インド洋の仏領レユニオン島をはじめ点在する仏領土が寸断される恐れがある。

 今年5月には、日米仏の艦艇と陸上部隊が結集し、日本の南西方面の無人島で着上陸訓練を行う。日本は米英など英語圏5カ国でつくる機密情報共有の枠組み「ファイブアイズ」について、日仏両国を加えた「プラス2」の枠組みと位置付ける。

 英国は環太平洋連携協定(TPP)加盟を正式表明した。対中包囲網構築の側面もあるTPPは、物品関税の撤廃・削減だけでなく、知的財産権の保護や貿易・投資の先進的なルール導入が特長だ。アジア太平洋地域のTPPに欧州の英国が加わる意義は大きい。

 また英国は今年、同国海軍史上最大の艦艇である最新鋭空母「クイーン・エリザベス」を中核とする空母打撃群を東アジアに長期展開する。3日には、日英外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)が開かれる。英独仏などの主要国をはじめ欧州との信頼関係構築に努めたい。

 全体主義を容認するな

 中国は共産党一党独裁体制の下、国内では強権統治、国外では膨張政策を進めている。日本はFOIP構想実現のため、欧州諸国との連携を強めるとともに、中国の全体主義を容認しない姿勢を明確にすべきだ。