大飯原発判決 不当で無責任な許可取り消し


 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)で想定される地震の揺れ(基準地震動)が過小評価されているとして、福井県など11府県の住民127人が原子力規制委員会の設置変更許可処分の取り消しを求めた訴訟で、大阪地裁の森鍵一裁判長は「規制委の判断には不合理な点がある」と述べ、許可処分を取り消す判決を言い渡した。

 しかし、3、4号機は規制委の安全審査に合格して再稼働した原発だ。専門的知見に基づく判断を否定するのは司法の暴走だと言わざるを得ない。

規制委の処分は「違法」

 設置変更許可とは、再稼働の前提となる事実上の合格証を意味する。東京電力福島第1原発事故を機に定められた新規制基準による設置変更許可を取り消す司法判断は初めてだ。

 森鍵裁判長は、想定される地震の規模について、平均より大きくなる「ばらつき」も考慮すべきだとした。その上で、規制委は「ばらつき」などによる想定の上乗せを検討しなかったと述べ、許可処分を「審査すべき点を審査していないので違法」と結論付けた。

 3、4号機は現在、定期検査で運転を停止している。原発がすぐに止まる仮処分決定と違い、取り消しの効力は判決確定まで生じない。だが3、4号機は、原子力や地震などの専門家で構成される規制委が、世界で最も厳しいレベルの新規制基準に適合すると判断している。

 訴訟で国側は、耐震性は余裕を持って設計されており、仮に基準地震動を超える地震が発生しても安全機能を直ちに喪失することはないと主張していた。原発の安全性に関する判断は高度な専門性が求められる。

 最高裁は1992年10月、原発の安全基準の適合性について「科学的、専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う行政側の合理的判断に委ねると解するのが相当である」との判断を示している。今回の判決はこの判例から逸脱しており、不当かつ無責任だ。

 3、4号機をめぐっては、福井地裁が2014年5月、関電に運転差し止めを命じる判決を下した。しかし名古屋高裁金沢支部は18年7月、控訴審判決で差し止めを取り消した。

 一方、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)について、広島高裁は今年1月、仮処分の即時抗告審で運転を差し止める決定を出した。このため伊方3号機は運転を再開できない状況が続いているなど、原発が司法判断に振り回されてきた経緯がある。

 安価で安定したエネルギーの供給に原発は欠かせない。政府はエネルギー基本計画で「重要なベースロード電源」と位置付けている。発電の際に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発は、地球温暖化対策にも活用することができる。立地自治体では雇用が生まれるなど経済活性化につながる面もある。原発の運転が司法判断によって不安定化すれば、甚大な悪影響を及ぼしかねない。

司法は混乱を招くな

 司法は原発の安全性について専門家の判断に委ねるべきだ。独善的な解釈で混乱を招くことがあってはならない。