中国外相来日 尖閣で公船活動正当化は遺憾


 中国の王毅外相が来日し、茂木敏充外相との日中外相会談はじめわが国要人と会談した。中国・武漢市で発生した新型コロナウイルス感染の世界流行で各国同様にわが国も非常事態に見舞われ、東京五輪・パラリンピックが延期になるなど甚大な影響について中国側の責任感は薄く、また沖縄県・尖閣諸島周辺の中国公船が撤収する見込みも立たなかった。歓迎できない来日と言わざるを得ない。

 日本漁船を追い回す

 来日した王氏は、コロナ禍の中での対面外交を「大変有意義」と強調したが、中国は信頼できない行動を取っている。地域的な包括的経済連携(RCEP)署名を背景に、ビジネス往来の再開など経済関係を維持するとしても中国の対応が改まらなければ有意義ではない。

 中国は経済ではRCEPなど自由な貿易の枠組みに参入しようとする一方、新疆ウイグル自治区、香港で自由と人権を抑圧し、南シナ海や東シナ海で力による現状変更を試みるなど国際協調を乱している。東シナ海でわが国も深刻な試練に直面している。

 新型コロナ感染による緊急事態宣言が発令された春の期間を含む1~8月、尖閣諸島沖の領海侵犯や接続水域での活動を行った中国公船は延べ873隻と過去最多となり、今月19日には通算300日目となる航行が確認された。

 このような環境は、王氏の「ハイレベルの意思疎通と双方の努力を通じて、日中関係全体が良い方向に向かっている」という認識とは正反対のものだ。

 中国は2018年に海警局を武装警察部隊の傘下に改組して大型公船を航行させており、今年10月にはわが国の漁船を2日以上にわたって追い回すなど威嚇を強めている。王氏と会談した菅義偉首相、加藤勝信官房長官、茂木氏とも懸念を伝えたが、馬耳東風ではなかったか。

 特に外相会談で、王氏は「自国の主権を守る」と中国側の尖閣諸島の領有権の主張を繰り返し、わが国の漁船に対する追尾について「中国側としてはやむを得ず、非常的な反応をしなければならない」と反論した。

 このような中国公船の活動正当化は誠に遺憾なことだ。常態化による既成事実を積み上げ、かつてはわが国以外に領有を主張することもない固有の領土に外ならない尖閣諸島が徐々に係争地に仕立て上げられていくのは、極めて深刻な問題だ。

 尖閣諸島は1895年に日本の領土となって沖縄県に編入され、敗戦によって米国に占領されたが、米軍は日本人地主に借地料を払って射爆演習場として用い、1972年に沖縄県石垣市の一部として日本に返還された。政府側は懸念を伝え自制を促すだけでなく、はっきりと出ていくように抗議しなければならない。

 中国をルールに従わせよ

 オーストラリアでは中国の世論・政界への買収工作疑惑が問題になり、脅威を認識したモリソン首相が来日したばかりだ。わが国は日米安保条約を軸に、中国からの威嚇・挑発を受けるインド太平洋地域の国々と連携し、中国をルールに従わせる国際力学の構築に努めるべきだ。