核兵器禁止条約 核抑止否定は受け入れられぬ


 核兵器禁止条約の批准書や受託書を国連に寄託した国・地域が発効に必要な50に達し、条約は来年1月22日に発効することになった。

 核兵器の使用や保有を初めて違法化する国際条約となるが、加盟国以外に効力は及ばない。北朝鮮の核の脅威にさらされ、米国の「核の傘」の下にある日本が、核による抑止も否定する条約を批准しなかったのは当然である。

全ての保有国は加盟せず

 この条約は2017年3月、核軍縮の停滞を背景に非保有国の主導で制定交渉が始まり、同年7月に採択された。しかし核廃絶という理想を追求するあまり、核をめぐる国際情勢を無視したものになったと断じざるを得ない。発効によって、既存の核拡散防止条約(NPT)の枠組みが分断される懸念もある。

 スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、今年1月時点で世界9カ国が推定1万3400発の核弾頭を保有している。9カ国とは、NPTで核保有が認められている米英仏露中と、NPTに加盟していないインド、パキスタン、イスラエル、03年に脱退を表明した北朝鮮だ。これらの国々はいずれも条約に加盟しなかった。

 北朝鮮は過去6回にわたって核実験を強行し、各種ミサイルの発射実験も繰り返している。米国との非核化交渉に応じながらも密(ひそ)かに核・ミサイル開発を続けてきた。

 20年版防衛白書は、北朝鮮が日本を射程に収める核搭載の弾道ミサイルを「既に保有しているとみられる」と明記。潜水艦や移動式発射台からの発射など攻撃形態を複雑化させ、日本や関係国にとって「新たな課題」になっているとしている。

 また沖縄県・尖閣諸島問題などで日本と対立する中国も、核兵器の増強を継続するとともに核関連設備の近代化を進めている。北朝鮮や中国の核の脅威に対抗するには、核抑止力が不可欠である。

 この条約の問題点は、核兵器の使用や保有だけでなく、核による威嚇も禁じていることだ。「威嚇」と「抑止」は表裏一体で、米国の核抑止力に依存する日本としては決して受け入れられない。

 条約発効が確定したことを受け、加藤勝信官房長官は「署名は行わない考え方に変わりはない」として不参加の方針を改めて示した。わが国を取り巻く安全保障環境の厳しさを踏まえれば、このような非現実的な条約を批准することはできない。日本のほか、やはり米国の核の傘の下にある韓国や北大西洋条約機構(NATO)加盟国も加盟しなかった。

 条約のもう一つの問題点は、順守状況を厳格に検証する仕組みが不十分なことだ。これでは仮に全ての核保有国が条約に加盟したとしても、本当に核兵器を放棄したか確認できない。隠し持っていた国が有利になってしまう。

日米同盟強化で安全守れ

 核兵器を禁止すれば、かえって平和を損ないかねない。日本の安全を守るため必要なのは、日米同盟を強化して核抑止力を確保し続けることだ。