コロナ禍と文化 活動継続と新しい形模索を


 きょうは文化の日。新型コロナウイルスの感染拡大で文化活動が大きく制限され、舞台芸術などが苦境に置かれている。活動継続と「新しい日常」での活動形態の模索が求められる一方、文化について根本的に問い直す機会ともなっている。

 舞台芸術に大きな影響

 新型コロナの影響は文化活動全般に及んでいる。特に影響が大きいのは歌舞伎や演劇、コンサートなど舞台芸術だ。日本の伝統文化を代表する東京・銀座の歌舞伎座は3月から休演。市川海老蔵さんが江戸歌舞伎の大名跡、十三代目市川團十郎を襲名する公演が5月に予定されていたが、これも延期となった。

 8月から政府のガイドラインに従い通常の50%の座席で再開し、制限が解除されてもほぼ50%の座席数にとどめている。観客に高齢者が少なくないため、慎重な姿勢を取っているのだ。

 映画館やクラシックコンサートなども再開以後、クラスターの発生はない。感染対策に積極的に取り組んでいるからだろう。関係者の努力を評価したい。

 こういう状況の中で文化庁は、文化芸術活動を行う個人や小規模団体が、一層の感染防止策を取りつつ積極的に活動を継続していくことを資金援助する事業を実施している。新型コロナの感染が長引いているため、当初10月までだった事業は来年2月いっぱいまで延長された。

 上限150万円の支援金が給付されるが、欧州諸国などと比べると十分とは言えないだろう。新型コロナが収束するにはまだ時間がかかりそうで、新常態での新しいスタイルをさらに工夫していく必要がある。コアなファンだけでは、経営的にも厳しくなっていくことが予想されるので、公的な支援の一層の充実が求められる。

 文化は人々の交流の中で生まれる。市民文化の時代を開いたフランスのサロン、日本の歌会や句会などの「座の文芸」は、人々が集まることで育まれてきた。直接集まれなくても、インターネットを使うなどして交流を続けていくべきだ。

 文化とは人々の日常生活を土台とした生き方の総体であることを考えると「ウィズコロナ」の状況の中で新しい文化が生まれてくる可能性もある。

 今年は作家の三島由紀夫が陸上自衛隊の市ケ谷駐屯地で、憲法改正に向けて自衛隊の決起を呼び掛け割腹自殺を遂げてから50年目に当たる。三島は「文化防衛論」で日本文化を守ることを訴えた。当時その主張と行動は一般の人々の意識とかなりの隔たりがあったが、今や固有文化を守ることの重要性は常識となっている。

 新型コロナの感染拡大で、地方のさまざまな祭りが中止となった。祭りは人々の生活や信仰に根差し、世代を超えて継承されてきたものだ。少子化で後継者が不足しているところに新型コロナが襲った。中止が続けば祭りが絶えてしまう。

 地方消滅防ぐ祭りの存続

 政府は、地方に伝わる多くの祭りや郷土料理などを無形の「登録文化財」に指定し、重要無形文化財のように公費の支援を行うことを検討している。祭りを守ることは、地方消滅を防ぐことにもつながる。