「大阪都」再度否決 経済浮揚への改革は必要だ


 
 大阪市を廃止して四つの特別区に再編する「大阪都構想」の是非を問う2度目の住民投票が行われ、反対が多数となった。このため、現在の市が存続することとなった。

 都構想を推進してきた日本維新の会の松井一郎代表(大阪市長)は2023年春までの任期を全うした上で政界を引退する意向だ。

 半数近くが賛成に回る

 大阪都構想は政令市である大阪市を廃止し、四つの特別区に再編。産業振興や成長戦略といった広域行政の権限を大阪府に一元化し、特別区は福祉や教育、子育て支援など住民に身近なサービスを担うというものだ。

 府知事と市長を務めた橋下徹氏が、府と市の二重行政を解消するため10年に提唱した。しかし15年の住民投票では反対が僅差で上回り、橋下氏は政界を引退した。

 その後19年春には、都構想の再挑戦を掲げる松井知事(当時)と吉村洋文市長(同)が、それぞれ立場を入れ替えたダブル選を実施。同じタイミングで行った府議・市議選と併せ、地域政党「大阪維新の会」が大きく勝利した。

 これで都構想に反対だった公明党が賛成へ方針転換。維新と公明との協力で、制度案の承認がスムーズに進んだ。今回は15年の住民投票の案に比べて特別区を5から4に減らし、区庁舎に既存施設を使うことで初期投資を6割削減した。

 都構想の「行政の無駄をなくす」という狙いに異存はない。ただ、市民の理解を十分に得ることはできなかった。都構想の「メリットが分からない」という声も多かった。

 選挙戦では、賛成派と反対派が将来の財政について全く異なる主張を展開した。賛成派は、4特別区は黒字を維持し、全体の黒字額は年17億~77億円になるとした。一方、反対派は新型コロナウイルスの影響を一部しか反映していないとして「試算は楽観的すぎる」と批判してきた。これでは有権者はどちらが正しいのか分からず、混乱したのではないか。

 大阪市が廃止されれば、市税の一部は府に移譲され、府と特別区の事務分担量に応じて再配分される。約8割は特別区に、残る約2割が府に回るため、反対派は「特別区の自主財源が減り、地域の特色を出しにくくなる」と批判してきた。

 住民サービスが低下することへの懸念も強かった。市民の不安を払拭(ふっしょく)し切れなかったことも、都構想が否決された原因の一つだろう。

 ただ反対派も、投票した有権者の半数近くが賛成に回ったことは謙虚に受け止める必要がある。東京一極集中が続く中、現行の地方自治の枠組みに一石を投じた都構想が大きな注目を集めたことは確かだ。

 都構想は否決されたが、地盤沈下が止まらない大阪経済の浮揚には、違った形での改革が求められよう。松井、吉村両氏の手腕が引き続き問われている。

 万博成功へ機運醸成を

 25年には大阪・夢洲で国際博覧会(大阪・関西万博)が開かれる。万博の成功に向け、府と市の連携はもとより、日本全体で機運を醸成していくべきだ。