秋元議員再逮捕 保釈判断甘く政治不信を拡大
カジノを含む統合型リゾート(IR)事業をめぐり、参入を目指していた中国企業から賄賂を受け取った罪で逮捕、起訴され保釈されていた衆院議員の秋元司容疑者が、贈賄側に虚偽の証言をするよう依頼し、現金供与を申し込んだとして組織犯罪処罰法違反(証人等買収)の疑いで東京地検特捜部に再び逮捕された。
贈賄側に虚偽証言依頼
本人は否認しているが、容疑が事実とすれば許されざる犯罪であり、政治不信をさらに拡大させる深刻な事件である。裁判所も保釈率の上昇に目を向け過ぎていないか。保釈がなければ事件が起きなかった可能性を踏まえれば、保釈判断の甘さにもメスが入れられるべきである。
秋元容疑者は2月、収賄罪で追起訴された。総額760万円を受け取ったとする起訴内容を全面否認している。否認する被告の早期保釈は異例だった。
保釈条件は事件関係者に弁護人を介さずに接触することを禁じていた。だが秋元容疑者は6月、共謀の疑いのある会社役員らと那覇市内のホテルで、IR汚職事件の贈賄側の被告に法廷での虚偽証言を依頼し、そのための報酬として現金1000万円の提供を申し込み、さらに7月、2000万円の供与を持ち掛けたとされている。
会社役員は「1000万円の買収資金を秋元容疑者が用意した」と供述しており、事実であれば秋元容疑者が一連の買収工作を主導した可能性が大きくなる。しかも、最も接触してはいけない人物へのアプローチであり罪証隠滅行為に相当しよう。証人等買収罪は虚偽証言や証拠隠滅の報酬として金銭を提供する行為を対象とし、相手が受け取らなくても処罰される。
裁判所が保釈を認めた背景には、保釈率を高めたい思惑があり、実際にこのところ上昇している。だが、昨年末に日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告が保釈中にレバノンに逃亡してしまった。保釈中の被告が新たな事件に関わる例も後を絶たないという。秋元容疑者の場合、現職の国会議員であり、国会開会中だったことも考慮されて早期保釈が決定された。今回、それが裏目に出た形である。
裁判所に求めたいのは、保釈判断の再検討だ。秋元容疑者は認定された賄賂のうち現金300万円の授受自体を否定し、賄賂とされた旅行費の支払いは秘書に指示したとして責任回避に努めている。保釈すれば罪証隠滅の恐れが出てくることは予想できた。個別の案件を十分に検討して政治家への保釈の条件を厳しく見直すべきではないか。
真相を徹底解明せよ
一方、保釈後の秋元容疑者は「起訴事実すべてを否認して無罪を主張していく」として議員活動を再開していた。そうであればなぜ、起訴内容を認めている贈賄側に偽証するよう現金の提供を持ち掛けてまで依頼工作を行う必要があったのか。これが事実であれば、政治家個人の規範性が疑われよう。
政治不信を国民に拡大させていることも問題である。安倍政権が成長戦略の「目玉」とするカジノ事業に関わる疑惑を払拭(ふっしょく)するためにも、真相の徹底解明が求められる。