核廃棄物処分場 候補地選定で実際の歩みを


 原子力発電の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場の選定をめぐり、北海道寿都(すっつ)町は、調査の第1段階に当たる「文献調査」の受け入れを検討している。原発事業を推進していくのに、核廃棄物処分場建設は急務である。場所の選定に向け事態の進展を願ってやまない。

 最終結果までに20年

 寿都町の片岡春雄町長は26日に開く「町民意見交換会」を経て、9月にも調査に応募するか判断する考えだ。 応募を表明すれば、政府が2017年、選定のための調査対象となりうる地域を示した「科学的特性マップ」を公表して以来、初めての自治体となる。

 調査は3段階に分けて行う。研究論文や地質のデータなどから地層の状況を把握する「文献調査」に2年。その後、地質や地下水などの状況を調べる第2段階の「概要調査」が4年程度、将来の地層の安定性を調べる第3段階の「精密調査」に約14年をかけて結果をまとめる。

 処分場決定までに約20年を要する長丁場だが、ずっと進展のなかった候補地選定の動きを実際に始めることが重要だ。

 片岡町長は、文献調査を受け入れると、国から2年間で支給される最高約20億円の交付金を、人口減少や財政課題を抱える町の再生のために活かすとしている。自分の町の将来のことは自分たちで決定したい、困っている国を助けたい、という趣旨のことも話している。

 一方、同町長に対しすでに隣接3町村長が慎重な検討の申し入れを行ったり、風評被害が起こると予想し、地元漁協の代表らが抗議文を手渡したりするなど、反対の動きが出ている。また、第1段階の調査が終了しても、第2段階の調査を進めるには北海道知事の意向を聞くことが前提。今のところ知事は「反対の意見を述べる」としており、厳しい局面が見えている。

 07年には高知県東洋町が文献調査に応募したが、町民らが賛否に分かれ対立、議論が深まらないまま頓挫した。今回、政府は改めて国民に最終処分の安全性や意義を説明し、原子力産業の重要性を訴える必要がある。世論が盛り上がれば首長たちの意見も変わってこよう。

 一方、わが国にはウラン資源がほとんどなく、これまで原発から出た使用済み核燃料をすべて再処理し、何度も利用できる核燃料サイクルの実現を目指してきた。戦後、原子力の平和利用は国民総意で決定され、それに基づき生まれた原子力基本法では、原子力の研究、開発によってエネルギー資源を確保するとしている。

 高レベル放射性廃棄物の処分は国が最終的責任を持たなければならないが、国内のどこかで処分する必要があり、国民全体が関心を持つことが必須だ。

 複数自治体が挙手か

 寿都町の応募検討に関連し、梶山弘志経済産業相は「複数の自治体から問い合わせを受けている」と述べて応募に前向きな自治体は同町以外にもあると示唆した。複数の自治体が調査受け入れに手を挙げるのは願ってもないことだ。調査で得られるデータを比較検討し、最も適切な建設地を選ぶことができる。