首相連続在職最長 コロナ後に備え憲法改正急げ
安倍晋三首相はきょう、2012年の政権復帰以来の連続在職日数が2799日となり、大叔父である佐藤栄作元首相の記録を更新して歴代最長となった。首相の自民党総裁任期は来年9月末まで1年余り。収束のメドが立たない新型コロナウイルス感染拡大と景気の落ち込みに加え、中国の安保脅威も強まっている。新型コロナ禍に対処し、その後に備える国造りに向けて、今こそ憲法改正に拍車を掛けるべきだ。
頭もたげる驕りと緩み
首相は既に06年9月~07年8月の第1次内閣を含めた通算在職日数では、昨年11月20日に桂太郎元首相の記録(2886日)を抜いて最長記録を更新中だ。再登板後に長期政権を維持できたのは、不本意な短命に終わった第1次政権への反省から「アベノミクス」を掲げて「経済最優先」の政権運営で景気を回復させ、昨年の参院選まで大型国政選挙で6連勝したことが最大の要因だろう。
正面から「戦後レジームからの脱却」を掲げ、教育基本法改正、防衛庁の省昇格、憲法改正の手続きを定めた国民投票法制定などを矢継ぎ早に実現しながらも、護憲派の政党やマスコミから総攻撃を受けた苦い経験を生かしたものと言える。
とはいえ、再登板後も国家安全保障会議(NSC)を発足させ、集団的自衛権の限定的行使を容認する安全保障関連法の制定などを実現し、与野党が激しく対立する中でも、覇権主義的な膨張を続ける中国や核・ミサイル開発を続ける北朝鮮によって厳しさを増す安保環境に対応する体制づくりを着実に進めてきた。その功は大きい。
一方で、未曽有の長期政権となる中で政府・与党に緩みや驕(おご)りが生まれてきたことも否定できない。安倍政権の長期化は、国民の期待を裏切った民主党政権の拙い政権運営の反動でもあった。経済も安全保障――とりわけ日米同盟――も危機的な状況に貶(おとし)めた民主党は、政権を離れた後は目先の利益のために離合集散を繰り返し、ついには理念・政策の異なる共産党の選挙協力がなければ党勢すら維持できなくなった。これでは国民が安心して政権を任せられないのは当然だ。
ただ、3年3カ月の野党時代を経てより謙虚な姿勢で政権に就いた自民党も「自民1強」「安倍1強」時代が続く中、徐々に長期政権の悪弊が頭をもたげてきた。そんな最中に新型コロナ禍に襲われ、経済も大きな打撃を被り、それを尻目に中国が覇権主義を一層強めている。
休むことも自己管理だ
外面的に見れば課題山積だが、これは初心に帰って出直すチャンスでもある。残る1年余りの任期が長いか短いかは首相の心持ち次第だ。新型コロナ禍を克服しつつ、コロナ後の社会と経済と安保体制を整えることは喫緊の課題だが、そのために緊急事態に備える法制を裏付けたり、自衛隊に根拠を与えたりする憲法改正は必要だ。
国会での議論は停滞しているが、改正を実現するための道はまだあるはずだ。改憲を目指すには、まずは自己管理が必要だ。体調を整えるため休むことも重要な任務である。