東京の感染者急増、危機意識共有し適切な行動を


 東京都内で新型コロナウイルスの感染者が急増しているのを受け、東京都と神奈川県、埼玉県、千葉県、山梨県の1都4県の知事が今週末の外出自粛などを呼び掛けた。「オーバーシュート(患者の爆発的な急増)」を起こさないために、住民一人一人に危機意識の共有と適切な行動が求められる。

3連休の人出が影響か

 比較的感染が抑えられていたとみられていた東京だが、25日には1日当たりの新たな感染者数が過去最多の41人に急増し、昨日はそれを上回る47人となった。その中で感染経路が不明のものが増えている。オーバーシュートを起こし、医療現場が対応できなくなる事態は何としても避けなければならない。

 欧米諸都市では、オーバーシュートが起きロックダウン(都市封鎖)や外出禁止令が出されている。米国ではニューヨーク市で感染の爆発的な広がりが起き、繁華街のタイムズスクエアに人影を見ないという近未来映画のような光景が現出している。小池百合子東京都知事は、オーバーシュートが生じた場合に「ロックダウンなどの強力な措置を取らざるを得ない可能性もある」と述べた。

 小池知事は25日に「感染爆発の重大局面」にあると強調した。そして平日はできるだけ自宅で仕事を行い、夜間の外出を控える、飲食を伴う集まりは自粛する、週末も不要不急の外出を避けることなどを都民に訴えた。

 東京には周辺6県から1日280万人近くが訪れる。首都圏が一つの生活圏、通勤圏を形成していることを考えれば、周辺県が共同対処して首都圏の爆発的感染拡大を防いでいきたい。

 東京都での感染者の急増は、先週の3連休の人出などが影響したとの見方が強い。大規模イベントの自粛が要請されている中、埼玉県では格闘技のイベントも開かれた。こうした緩みが感染の爆発的拡大を招きかねないとの危機感が1都4県知事の呼び掛けとなった。

 地方自治体の首長による要請は重い。しかし、それは強制することはできない。結局のところ、住民一人一人の判断と行動に委ねられる側面が大きい。適切な行動ができなければ、欧米の都市で起きていることが首都圏で生じかねない。まさに重大局面にあるという強い危機意識を持つ必要がある。

 パンデミックを招いた一つの理由として、新型ウイルスは発症しなくても2週間近い潜伏期間を持ち、その間に感染を広げてしまうという性質がある。

 小池知事は「感染しても症状の出ない若い方々が、無自覚のうちにウイルスを拡散させてしまうことが懸念される」と述べ、若い世代に危機意識の共有を訴えた。若い人たちは感染しても発症する率は低いと言われるが、社会全体のことを考え、感染予防の行動を求めたい。

一丸となって抑えよ

 東京都内での感染者急増を受けて政府は、改正新型インフルエンザ対策特別措置法に基づき、安倍晋三首相を本部長とする対策本部を設置して首相官邸で初会合を開いた。今後、緊急事態宣言に踏み切るかどうかも焦点となるが、一丸となって首都圏の感染爆発を抑えていきたい。