G7テレビ会議、新型コロナとの戦いに結束を
中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスの感染が拡大する中、先進7カ国(G7)外相によるテレビ会議が行われ、今後の感染拡大防止に向けた国際的な取り組みの強化で一致した。各国での徹底対策とともに国際協力による治療薬やワクチンの開発を実現するなど、事態の早期収拾に繋(つな)げてほしい。
欧州で死者1万人以上に
世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を宣言した新型コロナの感染拡大は、欧州に1万人以上の死亡者を出し、欧米はじめ世界各国に外出禁止・自粛などの行動制限をはじめ深刻な状況を招いて非常事態になっている。
首脳らも戦争状態の有事と認識し、国家非常事態宣言を発したトランプ米大統領は「戦時下の大統領」と自身を呼び、メルケル独首相は国民向け演説で「第2次世界大戦以来、最大の問題」と語るなど、世界各国は前例のない試練の中だ。
わが国も予断を許さない状況が続いている。先週の3連休前に大阪府が兵庫県との往来自粛を求め、東京都は感染者の増加を「感染爆発重大局面」と受け止めて今週末の不要不急の外出自粛を要請。外務省はすべての国への渡航の自粛を求めた。
国籍を超えて多数の人と接触する外交官や政治関係者に感染の恐れが高まる中、米国は6月に予定されるG7首脳会議(サミット)の開催を、ワシントン近郊のキャンプデービッド山荘では中止し、テレビ会議で行うことを発表した。
G7外相会合も当初は米ペンシルベニア州ピッツバーグで予定されていたもので、テレビ会議は初めてだ。グローバルな人と物の移動が仇(あだ)となる感染拡大の事態だが、解決へのコミュニケーションは物理的に離れていても、情報を公開、共有し、さまざまな発想を持ち寄って緊密に行うグローバル化が必要だ。
この点で中国の初動に隠蔽(いんぺい)問題があり、結果的に国際的な対処も遅れて今日の事態を招いている。テレビ会議で茂木敏充外相は、パンデミックの収束に向けてG7が主導的な役割を果たしていくことを呼び掛けたが、正確な情報を迅速にやりとりできる民主的な先進諸国に期待するほかないのが現実だ。
解決に向けて決め手となるのは、ワクチンや治療薬の一日も早い開発であることは、2009年の新型インフルエンザが当時既に製造販売されていたタミフルやリレンザに効果があることが分かって事態収束に向かったことでも明らかだ。
先に行われたG7財務相の電話会議では、感染拡大がもたらす経済的影響を緩和するために各国が財政出動を行うことを確認し、国際通貨基金(IMF)や世界銀行の経済・医療への対処を支持している。
人類的取り組みリードを
また、新型コロナに対して国際製薬団体連合会(IFPMA)がワクチンの共同開発などで連携すると発表しており、各国政府の研究機関や学術界との協力も進める。このような取り組みを莫大(ばくだい)な開発費の拠出をはじめG7が後押しすることになる。国益上の損得を超えた人類的な取り組みとして世界をリードしてほしい。