国民投票法案 建設的でない野党の遅延戦術
憲法改正の手続きである国民投票法の改正は、立憲民主党などの野党が今国会の採決に応じないとする中で来月9日の会期まで2週間を切っており、日程的に厳しい状況になっている。同法案は継続審議になる見通しだが、昨年通常国会での提出から2年も費やす野党の遅延戦術は建設的とは言えない。
利便性を高める狙い
憲法96条の改正手続きを受けた国民投票法は2007年に成立し、14年には「20歳以上」だった投票年齢を18歳以上に引き下げるなどの改正を当時の与野党8党の合意に基づいて行った。
昨年来、継続審議されている国民投票法改正案の目的は投票の利便性を高めることであり、野党側から提案されたテレビのコマーシャル(CM)規制についても検討が加えられている。
本来ならば、他の法律の改正案と同じように、現行法に従って国民投票が実施されてから、さまざまな見直しを行い、改正案が国会で審議されるべきだ。これでは、野党にとって改憲阻止の前哨戦になっているように見える。
戦後、戦争の放棄と戦力の不保持を明記した現憲法を「平和憲法」として支持する旧社会党や共産党は改憲論議をタブー視してきた。
このため、96条に改正条項が存在するにもかかわらず、改正手続きの法制化に現憲法の施行から60年を要した。それからなお国民投票法改正案の審議が延々と続いていることは、異常と言わざるを得ない。
同改正案では、駅や商業施設などへの共同投票所設置、期日前投票所の増設、期間、開閉時間の拡大、洋上投票の拡大、要介護者の郵便投票の拡大、投票所へ子供の同伴を可能にすることなど、有権者にとって投票の利便性が増す措置が盛り込まれている。
また、国民投票運動とCMのあり方を厳格にしようとする野党の提案は一理あるが、改憲案に対する国民投票の前提は、衆参両議員の3分の2以上の賛成だ。その改憲案の内容が、正しく広く有権者に伝えられることが第一であると与野党ともに認識し合意できるはずだ。
しかし、野党側が改憲のための舞台を整えようとしないのは、依然として9条改正への反対が立憲民主党、社民党など各野党に根強いばかりでなく、党綱領から反対姿勢を打ち出す共産党との共闘に踏み切ったからだ。これでは、与野党関係は戦後70年以上たっても9条問題をめぐる対決構造のままだ。
野党の安全保障政策はわが国に弱点をもたらすことから、衆参で3分の1余りの維持を目標とする万年野党の運命をたどりかねない。米英仏独などで政権を担うことがある中道左派勢力との決定的な違いだ。
与党と共同で改憲案を
わが国における特殊な9条問題を軸とする与野党対決から脱するため、良識ある野党はむしろ国民投票法改正に早期に応じ、国連憲章に認められた独立国の自衛権を反映した条文作りを与党と共同で行うことにより、現実的な政党として政権交代勢力としての存在感を示していくべきだ。