中国政府 新児童発展綱要から「言語尊重」表記を削除
少数民族同化 深刻化の恐れ
中国の国務院(内閣に相当)が新たに発表した教育に関する綱要で、少数民族の子供が民族の言語で学ぶ権利を「尊重・保障する」といった従来の表現が削除されていたことが、このほど分かった。中国政府が少数民族に対し進めている同化政策が、今後公然と行われることが懸念される。
(辻本奈緒子、村松澄恵)
国務院は9月27日付で、2021~30年版「中国婦女発展綱要」と「中国児童発展綱要」を省や自治区などの関係各所に向け発布。男女平等の推進や子供の教育などに関する政策目標を定めた。
11年発布の11~20年版の児童発展綱要では少数民族の教育について、中国語の普及に加え「少数民族の児童が民族言語で教育を受ける権利を尊重及び保障する。就学前のバイリンガル教育を重要視する」としていた。
しかし新版では、「民族地区の教育の質と量、水準を上げて、国の標準語と文字の推進を拡大する。民族団結を深める教育を行う」という文言が盛り込まれた一方、民族固有の言語の教育については触れられなかった。
中国の少数民族はウイグル、モンゴル、チベットを含む55集団あるとされ、「双語教育(バイリンガル教育)」政策を推進するなどの名目で中国語(漢語)教育が進められてきた。去年9月には内モンゴル自治区におけるモンゴル語での教育を段階的に中国語に置き換える措置が始まり、モンゴル国や欧米、日本に住むモンゴル人の間でも「文化的ジェノサイドだ」と反発する運動が広まっている。
日本などで活動する同自治区出身のモンゴル人による組織「南モンゴルクリルタイ」のオルホノド・ダイチン幹事長は本紙の取材に、「民族言語の権利は中国の憲法や民族区域自治法に書かれているが、(いきなり法律に手を付けず)少しずつ変えていくのが中国共産党のやり方。人権を無視する行為だ」とコメントした。
政府系メディア中国国際放送局によると、国務院女性児童作業委員会の黄暁薇副主任は9月27日に行われた記者会見で、11~20年版の同綱要について各目標はおおむね達成されたとし、「中国の女性と児童を保護する事業は新たな歴史的成果を収めた」と紹介した。