柔道73キロ級の大野将平が連覇、柔道で7人目
「集中・執念・我慢」、追い詰められて本領を発揮
自ら予想していた通り、連覇はたやすくなかった。男子73キロ級の大野は「リオデジャネイロ五輪後の苦しくてつらい日々を凝縮したような、そんな一日の戦いだった」。
今年6月の世界選手権を制したシャフダトゥアシビリには勢いがあり、好戦的に圧力をかけてきた。決勝は延長に入り、大野は反則負けに後がなくなる二つ目の指導を受けた。
それでも表情に焦りはない。徐々に組み勝つシーンが増えた。開始から9分25秒。奥襟をつかんでぐっと引き寄せ、支え釣り込み足で技あり。左手を相手の右脇に差し込んで回し切った。常々口にするモットーは「集中、執念、我慢」。その結晶が二つ目の金メダルとなった。
東京五輪は昨年2月以来、1年5カ月ぶりの実戦だった。今年3月の国際大会に出場を予定したが、直前に左脚を負傷。ある関係者は「体重も落としたが状態は悪く、柔道が崩れた」と明かす。
5月にはロシアでの国際合宿に日本選手でただ一人参加。自分より階級が重い五輪金メダリストとも組み合い、海外勢相手の感覚を取り戻したが、調整計画が狂ったのは事実だった。連覇を期待され続ける中「不安でいっぱいの日々を昨年からずっと過ごしていた」。そう口にした。
身上は「正しく組んで、正しく投げる柔道」。だが、結果を残せばその分だけ海外勢のマークは厳しくなった。対抗するため、オーソドックスな組み手ではなくても仕掛けられる技を磨いた。
理想は高い。本人の言う「古き良き柔道」を体現できたとは思っておらず「自分はまだまだ」。それでも、5年前と同様、優勝の瞬間も表情は崩さず、きれいな礼をして畳を下りた。その姿には発祥国日本の柔道家としての誇りが詰まっていた。