柔道で銀の渡名喜風南、心した「一喜一憂せず」
低迷期に母と恩師の支え、自分を取り戻しメダル第一号に
「一喜一憂しない」。東京五輪の日本勢メダル第一号となる銀メダルを獲得した柔道女子48キロ級、渡名喜風南選手(25)=パーク24=。一時低迷した大学時代、母の言葉や恩師の助言を心に刻み、自分を取り戻した。
遅咲きの柔道家だ。少女時代は「野性的な感じ」(渡名喜選手)の格闘技好き。9歳から五輪メダリスト中村美里選手らを輩出した名門・相武館吉田道場(相模原市)に通った。中学時代は田代未来、芳田司両選手とも稽古に明け暮れたが、一人成績を残せなかった。
芽が出始めたのは、修徳高(東京)時代。指導した宮田(旧姓北田)佳世さん(43)は同じ48キロ級で活躍し、谷亮子さんのライバルとしても知られる。不意のタイミングで繰り出される足技、寝技に光るものを感じた。
高3で初出場した全国高校総体は準優勝。しかし帝京大に進学すると、東京学生大会も勝てないスランプに陥った。「全然勝てない。どうしたらいいですか」。相談された宮田さんは「足技と寝技があるじゃない」と叱咤(しった)。小さい子供を抱えながら大学の道場に何度も足を運んだ。
全日本ジュニア初戦敗退後、母から掛けられた言葉は「死ぬこと以外、かすり傷。勝ち負けに一喜一憂しない方がいい」。渡名喜選手は「母の言葉で吹っ切れた」と振り返る。
2017年の世界選手権初制覇後は宿敵ダリア・ビロディド選手(20)=ウクライナ=に連敗を喫し、またも苦しい時期を迎えたが、言い聞かせたのは「一つの試合で一喜一憂しない」。5度目の対戦となった今年1月の国際大会で攻略し初勝利した。続く五輪準決勝は得意の寝技で同選手を撃破。頂点まであと一歩だった。
宮田さんは言う。「風南がすごいのは、どんなにけちょんけちょんにやられても、苦手意識関係なく勝っちゃう。自分を信じ切っている」