韓国は歴史の教訓に学べ

高永喆の半島安保NOW

高 永喆

 

 3月18日、ソウルで開かれた米韓両国の外務・国防閣僚協議(2プラス2)は成果無く終わった。

 バイデン政権発足後初めて外務、防衛の両閣僚が日韓を歴訪して2プラス2を開いた直後に米中外交トップ会談に挑んだのは、中朝の脅威が米外交の最優先課題であることを示している。今回、日米は中国の海洋進出と北朝鮮の核ミサイルの脅威に厳しい姿勢を表明したが、米韓協議で韓国側は中国と北朝鮮の顔色を見ながら曖昧な姿勢にとどまった。韓国にとって「米国は安保同盟国だが中国は最大の貿易国」なので、米中二股路線を維持しようとのスタンスだろう。

 日本と韓国は核を持ってないが、中国と北朝鮮は核保有国だ。だから、日米同盟と米韓同盟は東アジア地域の平和と安全を支える2本柱である。遠い強大国と同盟して隣の強大国を牽制(けんせい)する「遠交近攻」と「勢力均衡」は東西古今を問わず平和と安全を保つ二つの要諦である。

 朝鮮半島は大陸勢力と海洋勢力が衝突する地政学的な要衝地で、北緯38度線は大陸勢力と海洋勢力のバランスを維持するセンターラインと言える。

 71年前、北朝鮮は中国とソ連の軍事援助を受けて38度線を突破、南侵して釜山付近まで攻めて来た。だが、16カ国の連合国が参戦して38度線を中心とした現在の休戦ラインが設けられた。

 当時、日本人2000人が米海軍上陸艦(LST)の乗組員として仁川上陸作戦に参戦。同時に海上保安庁の掃海艇46隻(1200人)が機雷を掃海するなど、約8000人の日本人も参戦し、大きな役割を果たした。

 朝鮮戦争は自由民主陣営(海洋勢力)が共産独裁陣営(大陸勢力)の侵略を押しとどめた国際戦争だった。米国の海軍戦略家マハンは「大陸国家であることと海洋国家であることは両立し得ない」と指摘する。旧ソ連は大陸国家でありながら大海軍力を建設し米国との軍備競争に負けて1990年代の初め、15カ国に解体された。

 今度は中国が大海軍力を建設しながら米国との軍備競争に挑んでいる。銃、砲、戦車など地上の武器体系は4、5年で開発・製造(メイク)できる。しかし,空母、潜水艦、イージスシステムなど海軍力の建設(コンストラクション)は10~15年以上の歳月と莫大(ばくだい)な費用がかかる。経済負担が大きすぎるのだ。

 韓国は歴史の教訓を踏まえ賢明かつ知恵を凝らした外交・安保戦略を整えるべきである。

(拓殖大学主任研究員・元韓国国防省分析官)