共産党の地方政治新聞 地域住民に浸透する狙い

各地で「民報」「新報」

 共産党の地方政治新聞にご用心―。日本の多くの都道府県では、『東京民報』、『ほっかい新報』、『大阪民主新報』、『新埼玉』などの地方政治新聞が発行されている。私が調査しただけでも、21都道府県で、きちんと定期的に発行されていて購読できる地方政治新聞があり、さらにネット上ですべての紙面がきちんと見られるものが4紙ある。

 『東京民報』、『大阪民主新報』、『京都民報』の3紙は毎週発行されていて、一般の新聞のサイズ8ページ(東京、大阪)とか、A3サイズ16ページ(京都)のようにボリュームがあるが、『富山民報』、『沖縄民報』、『広島民報』などのようにA3サイズ2ページのようなものも多い。

 発行元も、『高知民報社』、『新やまがた社』などのように独立した社名で発行しているものもあれば、『兵庫民報』、『新ぐんま』のように対応する共産党都道府県委員会が発行しているものもある。1面と最終面がカラーのものから、すべてモノクロのものまでさまざまである。

 共産党の機関紙ではなく、地方政治新聞だから購読してもいいだろうと考える人がいるかもしれないが、実際の内容は、共産党の宣伝の内容が多く、選挙での共産党候補への投票を呼び掛けている。共産党が国民の中へ浸透するための武器となっている。

 共産党中央委員会のウェッブサイトには、「各地で『地方政治新聞』が読まれ、話題になっています。地域住民の立場、声を代表するメディアとして、地域の歴史、文化の担い手として親しまれています。『しんぶん赤旗』地方版が広域版になったもとで、『赤旗』日刊紙や同日曜版とともに各地で普及に力を入れています」とある。共産党が普及に力を入れる、れっきとした共産党系の新聞である。

 『週刊京都民報』2017年11月12日号の紙面は、1面が「9条改悪発議許さない 立憲野党と連帯 全国統一署名成功へ」と「京丹波町議選 共産党3氏全員当選」、2面は「『貧困・格差』ただす府政に 共産党府議団が予算要望」、「9条守れ新ポスター 『9条京都の会』が作成」など、3面は「危険な米軍基地いらない 京丹後市 いらんちゃフェスタに650人 集会・デモ」、「『共闘』共産党の役割大きい 青年サポーターズがトーク集会 小選挙区制は“独裁”招く」などであり、文化や芸術など政治との関係が薄い記事もあるが、共産党の宣伝新聞である。『奈良民報』8月6日号には、1面に「市田副委員長参院議員迎え過去最高の120人参加 共産党山添支部・後援会が『くらし・国政を話し合うつどい』」、2面に「2017年後半中間地方選挙 共産党の候補者を発表」とあり、共産党奈良県組織の広報の役割を果たしている。

ニュースで組織拡大

 地域で、職場で、学園で、無数のニュースを発行して組織を拡大していくのが共産党の方針である。共産党は、世界の共産主義政党の中でも珍しく、マルクス主義の根幹である史的唯物論の立場を堅持していて、共産主義社会は必ず実現すると主張し、共産主義社会実現に関係することを「進歩」とか「前進」と呼び、共産党の後退を「逆流」と呼ぶ。地方政治新聞などを増やして、読者とコンタクトを取り、共産党に入党してもらい、多数者革命を成功させるというのが共産党の根本戦略である。

 最後になったが、共産党は、どれだけ赤旗発行部数が減少しようとも、赤旗の発行をやめることはない。共産党の原則は、機関紙中心の活動であり、機関紙の拡大・配達・集金を通して国民と結びつき、革命を成功させようというものであるからである。