辺野古移設、平和を守るため死活的に重要


 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐって県は今月、石井啓一国土交通相が埋め立て承認撤回を取り消したのは違法として、国を相手取って決定の取り消しを求める抗告訴訟を那覇地裁に起こした。

県が新たに国を提訴

 県は昨年8月、埋め立て承認を撤回。防衛省沖縄防衛局は行政不服審査請求を行い、石井国交相が今年4月に撤回を取り消した。県は総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」に審査を申し出たが、6月に却下されていた。

 県は7月にも地方自治法に基づき、承認撤回の効力回復を求める訴訟を福岡高裁那覇支部に起こしている。辺野古移設に関する国と県の訴訟は、今月で8件目となる。

 「辺野古に新基地を造らせない」としていた故翁長雄志前知事は、移設を阻止しようと法廷闘争を繰り返してきた。だが、2016年12月には最高裁で国側が勝訴している。

 それにもかかわらず、翁長氏の遺志を引き継いだ玉城デニー知事は、辺野古移設に代わる案を示さないまま新たな訴訟を起こしている。国の安全保障に関わる問題で、こうした姿勢は極めて無責任だ。

 普天間飛行場は住宅密集地に立地し、「世界一危険な米軍基地」と言われる。04年8月には、近くの沖縄国際大の構内に在日米軍のヘリコプターが墜落。17年12月には、隣接する小学校の校庭に米軍ヘリの窓が落下する事故も起きている。

 地元住民を巻き込み、多数の死傷者を出すような大事故が発生すれば、日米安保体制を大きく揺るがすことにもなりかねない。辺野古移設は、危険性を除去しつつ米軍の抑止力を維持するための唯一の解決策であり、一日も早く実現しなければならない。

 沖縄では今年2月、辺野古移設の是非を問う県民投票が行われ、反対票が投票総数の7割を超えた。7月の参院選でも、沖縄選挙区では辺野古移設阻止を掲げる新人が勝利している。

 しかし沖縄は中国や朝鮮半島をにらむ戦略的要衝であり、在沖縄米軍の存在は、沖縄を含む日本全体の平和を守る上で死活的に重要だ。海洋進出を強める中国や、核・ミサイル開発を継続する北朝鮮の脅威の高まりに目を向ける必要がある。特に沖縄周辺では、中国公船が石垣市の尖閣諸島沖で領海侵入を繰り返しており、中国による尖閣侵攻への懸念は消えない。

 沖縄にとって、辺野古移設が基地負担の軽減につながることも忘れてはならない。辺野古では海上で演習を行うため、普天間とは違って騒音や危険性は少ない。

 日米両国が1996年4月、普天間返還で合意してから20年以上が経過した。この間、移設問題は曲折をたどったが、昨年12月に辺野古で埋め立て海域への土砂投入が始まったことで新たな局面を迎えた。移設工事を着実に進めるべきだ。

沖縄の一層の負担軽減を

 これとともに、政府には抑止力を損なわない範囲で沖縄の一層の基地負担軽減を図ることが求められる。