辺野古埋め立て移設の承認撤回で沖縄県の手法を疑問視する読、産経、小紙

◆何が何でも移設阻止

 沖縄県による承認の「撤回」と「取り消し」。いったい何が違うのか。米軍普天間飛行場(沖縄・宜野湾市)の名護市辺野古移設をめぐり、沖縄県は先月末に、仲井真弘多前知事が行った辺野古沿岸部の埋め立て承認を撤回した。撤回の権限を委任された謝花(じゃはな)喜一郎副知事が沖縄防衛局に通知した。

 この問題をめぐって県は既に、埋め立て承認の取り消し処分を行っているが、この処分については「違法」とする最高裁判決(2016年12月)が確定しているのに、今回は承認の「撤回」である。県は、前回の「取り消し」の後に「環境保全策の不備」などが発覚したことが理由だとしているが、何が何でも辺野古移設阻止のための屁理屈をこねている感じがしないでもない。

 これに対して政府は、論争の根幹部分は変わりないとして、撤回の執行停止を申し立てるとともにその取り消しを求める法的措置で対抗する方針である。普天間飛行場の辺野古問題は鳩山由紀夫氏率いる旧民主党政権の無責任な言動などで、こじれにこじれてしまったが、問題の原点は住宅や学校に囲まれた市街地にあり世界一危険と言われる飛行場の危険性の除去にある。この危険性の除去から返還へ、普天間を固定化させないためにも、一刻も早い辺野古移設が沖縄の基地負担軽減のベターな次へのワンステップとなることは、沖縄の県民感情とは別に冷静に考えれば理解がいこう。

◆平和に逆行する行為

 その辺りをよくくみ取った論調の読売(2日付)は、冒頭で「過重な沖縄の基地負担の軽減を、一歩一歩確実に進めることが重要だ」と書き、これに反し「基地問題を知事選の争点に据えるかのような沖縄県の手法」に強い疑問符を投げ掛けた。既に「司法の場で一度決着した問題を蒸し返そうとしているのは明らかだ」として、県の撤回の判断は「理解できない」「主張には無理があろう」と判定した。その上で政府に「着実に工事を進め」ることを求めた。

 また、時期が重なった知事選について言及し「沖縄の未来に向けて、産業振興やインフラ整備など幅広い視点から論戦」の展開を求めたが、いずれも責任ある言論の極めて妥当な見解を示したと言っていい。

 これに対して、日本を取り囲む厳しい国際情勢、外交・安全保障政策の大局から産経(1日付)は、ずばり「撤回は、日米同盟の抑止力による平和の維持と普天間周辺住民の安全確保に逆行する誤った判断であり容認できない」と斬り込んだ。法的対抗措置を取る政府の方針を支持し、沖縄県に対しては「そもそも、外交・安全保障政策を担うのは、国民の選挙によって構成される国会が指名した首相を長とする内閣」だと民主主義政治のイロハから説き、これを「自治体の長である知事に覆す権限は一切ない点を弁(わきま)えるべき」ことを強調した。

 さらに、日米両国の外交上の約束である辺野古移設をめぐり「環境対策を含め撤回を要するほどの不手際が国にあるとはいえない」ことにも言及し「(普天間)周辺住民の安全のためにも早期移設が急務だ。/抑止力と住民の安全のいずれをも損なう『撤回』こそ、平和に逆行する行為」だと断じた。明解な正論を展開は好感が持てる。

◆朝日は県の主張理解

 小紙(2日付)も、今回の沖縄県の埋め立て承認撤回について「辺野古移設は普天間飛行場の危険性を除去しつつ抑止力を維持するための唯一の方法であり、この問題の政治利用は極めて無責任だ」と主張。「移設を着実に進めるとともに沖縄県民の理解を得るための取り組みを続ける必要」に言及している。

 一方、朝日(1日付)は「県の度重なる行政指導にも従わず、工事を強行してきた」ことなどを挙げ、「県が『撤回』の理由にあげたことには相応の説得力がある」と沖縄県の主張に理解を示した。

 国が違法・不当なことをするという発想のない海面埋め立てに関する法律に「乗じる形で勝手を続ける政府に、正義や理を見いだすことはできない」として、「民意に基づく地方からの異議申し立てに、中央はどう向きあうべきか」と問い、県が撤回に至った事情などを「考え続ける必要がある」ことを強調するのだが。

(堀本和博)