オスプレイ、在日米軍は安全確保徹底を


 沖縄県名護市沖で不時着事故を起こした米軍新型輸送機オスプレイをめぐって、在日米軍は停止していた空中給油訓練を再開した。訓練は必要不可欠だが、安全確保を徹底しなければならない。

 空中給油訓練を再開

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属の海兵隊のMV22オスプレイ1機が昨年12月、空中給油の訓練中にプロペラを損傷、不時着して大破した。事故を受け、米軍はこの訓練を見合わせていたが、今年に入って再開に踏み切った。

 もっとも事故調査は続いており、原因究明途上での再開への反発は強い。オスプレイは開発段階で事故が相次いだこともあり、沖縄では配備に反対する意見も強い。沖縄県の翁長雄志知事は事故後、稲田朋美防衛相に「怒りを禁じ得ず、直ちに飛行中止と配備撤回を要請する」と抗議している。

 空中給油訓練再開後に、オスプレイから降下訓練中の陸軍兵1人が民間の葉タバコ畑に落下する事態も生じた。けが人はなかったものの、これでは信頼回復は難しい。訓練の必要性は理解するが、米軍には細心の注意を求めたい。

 オスプレイは普天間飛行場に24機配備されており、ヘリコプターと固定翼機(飛行機)の性能を持つ。両翼の回転翼を上に向けることでヘリのように垂直離着陸や空中停止ができ、回転翼を前方に傾斜させることで固定翼機のように高速で長距離飛行が可能となる。

 オスプレイの前に海兵隊で運用されていた中型輸送ヘリコプターCH46は、空中給油能力がなく、戦闘行動半径は140㌔にすぎなかった。中国が一方的に領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島でさえ圏外だった。

 これに対し、武装兵士24人を乗せたオスプレイの戦闘行動半径は約600㌔で尖閣をカバーできる。空中給油1回で約1100㌔まで伸び、上海などの中国沿岸部や台湾、フィリピン北部まで含むようになる。最大速度は時速520㌔でCH46の約2倍、搭載量は約2・5倍と性能が大幅に向上している。

 中国は南シナ海の軍事拠点化を進めるなど強引な海洋進出を行っている。昨年末に初めて西太平洋に進出した中国空母「遼寧」の艦隊は、台湾の蔡英文総統の外遊中に台湾海峡を航行する動きに出た。

 このような中国を牽制(けんせい)する上で、オスプレイの存在は極めて大きいと言える。また昨年4月の熊本地震の際に、被災地支援のため救援物資を輸送したことも記憶に新しい。2017年度の防衛予算案には、オスプレイ4機を陸上自衛隊に導入するための予算391億円が盛り込まれた。

 沖縄県民の理解を得るためにも、米軍は安全確保の徹底に努めるべきだ。10万飛行時間当たりの事故率が海兵隊全体と変わらないことも丁寧に説明する必要がある。

 抑止力向上に不可欠

 オスプレイは日米同盟強化と抑止力向上に欠かせない。事故などでオスプレイへの不信を招き、日米安保体制に悪影響が及ぶようなことは避けなければならない。