宜野湾市長選、追い風受け辺野古移設加速を
米軍普天間飛行場の移設問題が焦点となった沖縄県宜野湾市長選で、自民、公明が推薦した現職の佐喜真淳氏が大勝した。辺野古移設反対の翁長雄志知事を先頭に戦ってきた候補が敗北したことにより移設容認派には追い風となる。政府は普天間返還後の振興策策定を本格化させるとともに、辺野古移設作業を加速すべきだ。
「オール沖縄」は偽看板
佐喜真氏の勝因はまず、4年間の実績をアピールできたことだ。税収アップや教育福祉の拡充、米軍施設のある西普天間地区の先行返還実現などで27年間続いた革新市政ではなし得なかった改革と実績をわずか1期で上げた。その手腕に市民が一層の期待をしたものとみられる。
自民党など保守層の支持固めや前回の県知事選では自主投票だった公明党が挙党態勢で応援したことも要因だ。佐喜真氏は今後、「普天間のフェンスを取り払う」ために政府の後押しをすべきである。移設容認派も移設の流れをより確実にできるよう県民の理解を広げる努力をしなければならない。
政府の側面支援も不可欠だ。普天間飛行場の一部の先行返還で交通渋滞の緩和が期待されている。返還跡地における国際的な先端技術医療施設の建設やディズニーリゾート誘致の計画がある。夢を現実のものにし沖縄の未来を切り開く新たな一歩を踏み出せるよう尽力すべきだ。
同時に、政府は辺野古への移設作業を加速する必要がある。中国は尖閣諸島(石垣市)奪取を狙った領海侵犯を繰り返し、北朝鮮は「水爆」と自称する核実験を行って南北関係は緊張している。わが国に直接関係のある安全保障情勢の悪化に対して明確な抑止力を保持することは急務だ。
国は翁長知事との法廷闘争を抱える中ではあるが、安倍晋三首相が「安全保障に関わることは国全体で決める。一地域の選挙で決定しない」と語ったように、危険な国家に一瞬のスキも見せてはならない。その意味でも同盟関係にある米国との公約である普天間飛行場の辺野古移設を実現しなければならない。
一方、公務を入れない日もつくり鉢巻き姿で選挙運動を展開した翁長知事を先頭にしたリベラル陣営は、大きな痛手を負ったと言える。名護市長選、知事選、衆院選小選挙区で辺野古移設反対を掲げた候補が勝利してきたが、「オール沖縄」という偽看板がはがれたことになる。そこに浮き出てきたのが日本共産党の存在である。
選挙戦では共産党色を隠すために翁長氏の知事選と同じ緑色のイメージカラーを使い、共産党系の選挙カーやチラシでも革新色を薄めたり、一般の市民運動を装うなどの工夫をした。だが、リベラル陣営内には共産党と一線を引く動きが出ていた。
与党、国政選挙に弾み
今回の選挙は6月の県議選、7月の参院選にも連動する国政選挙並みの戦いとなった。勝利した側の政権与党にとって、次の京都市長選、4月の衆院北海道5区補選、参院選への弾みとなったろう。民主党はじめ野党には、共産党との連携が必ずしもプラスにはならないことを教示したものとなったはずだ。
(1月25日付社説)