沖縄県民と共に新たなページを
ソフトパワーで日米同盟強化
沖縄・北方担当相 島尻安伊子参院議員に聞く
島尻安伊子沖縄・北方担当相はこのほど世界日報社のインタビューに応じ、沖縄選出の沖縄担当相として「子供の貧困問題」への取り組みに意欲を示し、沖縄の明るい明日のため県民と共に新しいページを開きたいとの抱負を語った。また、昨年3月に返還された西普天間住宅地区の跡地に整備される「国際健康医療拠点」について、「日米同盟のシンボルになったら良い」と述べ、ソフトパワー面での同盟強化について言及した。(聞き手=政治部・山崎洋介)

 しまじり・あいこ 昭和40年、宮城県生まれ。上智大卒。平成16年、那覇市議会補欠選挙で初当選。2期目当選後同19年、参議院議員補欠選挙で初当選。同22年、参議院2期目。第2次安倍内閣では、内閣府大臣政務官・復興大臣政務官。現在、沖縄・北方担当相。
――沖縄振興費が2015年当初比で増額となったことは、沖縄振興への期待の表れだと思うが、沖縄選出の沖縄担当相として何を手掛けていきたいか。
沖縄を明るくするような、県民の生活に寄与する振興をしっかり行いたいと思ってきた。振興策は、仲井真弘多県政の時に作成された「沖縄21世紀ビジョン」にもあり、その中でも人材の教育が大事であるが、経済を強くするためには人だという観点から沖縄を見ると、子供の貧困の問題も手付かずのまま来ていた。そこを底上げしたいと思い、今回、結果的に子供の貧困問題に10億円の予算が付いた。本当の意味での沖縄の明るい明日のための振興を行い、県民と共に新しいページを開きたいと思っている。
東京五輪連携に意欲
「ディズニー」進出に期待も
――概算要求にはなかった子供の貧困対策費が島尻大臣の主導で盛り込まれた。沖縄の子供の貧困の実情はどういうものか。また、それがこの予算でどう改善されるか。
沖縄は所得の平均が低く、離婚率が高い。そのため一人親家庭の出現率が高くなり、母1人に子1人というような状況になってしまう。そうすると、子供の居場所がなくて、深夜徘徊(はいかい)や非行に走り、“子供が子供を産む”というような状況になってしまう。これを負のスパイラルと呼んでいる。これをどこかで断ち切らないといけないということは、沖縄の教育関係者や現場のNPOの方々が口をそろえて言っていることだ。
まず政策としては、子供の居場所づくりやヘルプのニーズがある子供たちをしっかり支えられる支援員を増やしていくことだ。考えられないような状況で生きている子供たちが結構いるので、しっかり居場所を作り、食事ができるところに連れて来るなどの対策から始めないといけない。
先日、現場の支援員やソーシャルワーカーと意見交換をした。県内41の市町村長に声掛けをし、37の市町村長が沖縄で一堂に会し、いろいろなケースについての発表があった。耳を疑いたくなるような話もあった。浦添市長との話では、ウイークデーは、給食があるので1日に1食は食べられる。しかし土日祝 日は、自分で食事を作れないでどうしていいか分からないというような子供たち少なくないということだ。だからこそすぐに手当てをしなくてはいけない。
――親がいないから食べられないのか。
親がいないからというケースもあるが、親のネグレクト(育児放棄)と言ってもいい範囲の問題だと考えている。まず保護を必要としている子供たちに目を向けてなんとかしようと取り組んでいる。
――学校に行く行かない以前の問題か。
そうだ。ただ、学校に行ったとしても、普通の子供とは違う格好をしているらしい。PTAや先生が現状を聞いて、これはなんとかしないといけないということで、立ち上がり「子供食堂」を作った。そこでは、小学生たちに食事を作り、プライドを傷つけないように「食育」と称して、みんなでご飯を作って食べようという取り組みが行われている。
――支援員はどれくらい増やそうとしているか。
これから詳細を詰める。この問題には、地域格差がある。離島には、こういう状況はあまりなく、どちらかというと都市部に多く見られる現象だ。そこは現状と照らし合わせて、実効性のある策を緊急に実行しないといけない。
――この問題は、あまり報道されていないのでは。
恐らく、こういった問題のしっかりとした調査は他の都道府県を含めて行っていないのではないか。最近、子供の貧困の問題が出てきて国としてもなんとかしようということで法律ができ、今年度中に調査結果を出すということになっていたと思う。私としては、全都道府県と同じやり方では、沖縄県の子供の貧困の問題は解決しないと考えている。
 ――昨年3月に返還された西普天間住宅地区の跡地利用に関する交付金も新設された。県民にどういうプラスになるか。
 コンセプトは、「国際健康医療拠点」ということなので、これが県民の暮らしや健康に寄与するものでなくてはいけないということは基本としてある。具体的にどうするのかと言うと、まずこの西普天間の跡地に琉球大学の医学部と病院を移してくる。それをコアにして先端医療の施設を県が持って来たいということで今、話が進んでいる。いろいろな研究開発をして県民のみならず、国民、世界中の人類に寄与するものにできたら良いと考えている。今、ビッグデータの解析を元にした研究開発があちこちで聞かれているが、西普天間の跡地でもこうした有効なデータ活用を行っていきたい。
他方、私はIT担当相でもあるので、ITを駆使して開発されたアプリを実験的に使いパイロットケースのようなものを宜野湾市や沖縄県で行っていくことも考えている。いずれにしても、沖縄は健康長寿の島だったはずだが、男性に至っては平均寿命が全国26位。順位がなぜ落ちたかという原因をしっかりと学術的に研究する取り組みが、沖縄の健康を取り戻し、伸ばしていくことに寄与すると考えている。
 ――人類に寄与するような国際先端医療施設ができれば、沖縄の人たちの誇りにもつながっていくのでは。
 その通りだ。また、米軍から返還された土地なので、日米同盟のシンボルになったら良いという思いは最初からあった。日米同盟の在り方として軍事だけでなく、健康医療などのソフトパワーが重要だ。対東南アジアやアジア全体の抑止にもつながると考えている。
――北部地域の観光振興に向けた調査費1・2億円も新たに盛り込まれた。観光ビジネス拡大に向けての展望は。
超大型観光施設の進出ということは、ここ数年、かなり前向きに捉えられていると認識している。せっかく出た芽なので、しっかり育てて、花を咲かせたい。
既存の施設とバッティングし、そこの衰退につながるのではという話もあるが、私はそうではないと思っている。むしろ相乗効果を上げるにはどうしたらいいかという議論をすべきだ。地元の商工会や会議所と大型施設のコラボレーションが十分あり得る姿だと思う。
例えば、お土産のお菓子にしても地元のものを作ってもらうコラボレーションはいくらでもできる。土地のものを対外的に発信する絶好のチャンスだと思っている。そのために政府として支援することがあればもちろん行っていきたい。これを機に、中小企業が世の中に出ていくステージを作っていきたい。
――宜野湾市の佐喜真淳市長が昨年12月8日に首相官邸を訪ね、米軍普天間飛行場の跡地利用の一環としてディズニーリゾートの施設を誘致するための支援を政府に要請した。菅義偉官房長官は前向きな姿勢を示したが、島尻大臣の考えは。
佐喜真市長と一緒に、オリエンタルランドに行った。オリエンタルランドが沖縄に対して関心を持っていることは分かったが、まずは市場調査から始めたいということだった。着実にいい方向に進んでいけばいいと思う。
――これに対する菅官房長官の熱心度は。
これまでの基地負担軽減への取り組みを見れば良く分かると思う。返還の話も前倒しで出てきている。これは、今までにはなかったことだ。目に見える形での負担軽減ということに関しては、本気で取り組んでいると思う。
――昨年12月15日に、舛添要一都知事とオリンピックの件で会談した。沖縄発祥とされる空手が2020年東京五輪の追加種目候補となったが、沖縄は五輪とどう関わっていきたい考えか。
例えば、キャンプで沖縄に来てもらうということもあるが、やはり空手を五輪の種目に入れたいと強く考えている。世界中に空手人口はたくさんいる。そういう方々に東京、あるいは、空手のメッカである沖縄に来てもらうというような効果を狙っていきたい。











