辺野古移設、抑止力の最前線基地に
安保情勢と普天間移設
沖縄の米軍問題を考える会代表 松谷秀夫(下)
普天間基地の危険性の除去として名護市辺野古地区キャンプ・シュワブの沿岸埋め立てによる代替施設建設が始まった。新たな面積は160㌶、滑走路1500㍍2本、V字に設計されている。埋め立ての最深部は10㍍で高度な技術が要求され、本体工事は本土大手企業によって施工され、陸上部分には司令部、兵員宿舎、航空機整備施設、弾薬保管庫などが予定されている。建設するからには海兵隊の運用に適合する施設でなければ費用対効果は薄く防衛上も問題となる。
中国は尖閣諸島対岸広州軍区福建省に新たな海軍基地の建設を開始し、旅大型駆逐艦をはじめ明型潜水艦、漢型原子力潜水艦、玉亭型揚陸艦、さらに隣接する滑走路も整備し海軍の海兵隊に相当する陸戦隊を配備するとみられている。この軍区には現在確認されている陸、海、空軍の航空基地は合わせて大小150ほどあるが、この新基地は最大級の規模となり琉球列島を含む九段線の、100年後との指摘もある最終段階への準備を着実に進めているとみられている。辺野古基地はこれらに対応する抑止力の最前線になるとされ完成度の高いものでなければならない。
総工費は周辺のインフラ整備も含めると1兆円を超えるとみられている。順調にいっても本体工事に9年、その後さまざまな運用試験を経て引き渡しまで最低10年ないし12年はかかるとされている。その間、普天間が使用される。
基地反対運動が、反米、果てには反日まで加わると日米安保全体の問題に発展しかねない。ただ海兵隊の沖縄撤退だけは避けなければならない。国会では安全保障関連法が成立したが、これを戦争法とするのは見当違いだ。日米安保における集団的自衛権を法的に正常な状態にして、国民の安全と財産、自由と平和を守り維持することが目的である。
安保法反対、米軍、辺野古反対を主張する活動家は安全保障の対案を持っているのだろうか。若者たちの政治集団シールズは安保関連法をしっかり読んでいるのか。日本が理由もなく他国を攻撃侵略することは絶対あり得ない。日本国はこれまでの歴史認識を教訓に国際的な規範の下、秩序ある行動を取ることが基本になっているからだ。自衛隊の軍事行動についても例外なく国会の審議承認が定められている。
これからでも決して遅くはない。海兵隊普天間基地問題は辺野古移設を基本として、さまざまなレベルで意見を交換し、国や県、国民、沖縄県民が力と力で対決することだけは避けなければならない。そのためにも日本を取り巻く国際情勢も理解しなければならないのである。
第2次世界大戦後、一度として戦争も無く侵略もされず平和であった日本。これも日米安保で厳重に守られていたからである。今こそ日本国民全体で在沖米軍の意義、日米安保、沖縄の基地負担など国際情勢を含めて議論すべきだと思う。











