沖縄を訪れた外国人観光客の約4割が台湾人

台北駐日経済文化代表処那覇分処 蘇啓誠処長に聞く

沖縄からの訪台増に期待

 台湾では来年1月、総統選が行われる。沖縄と台湾との人的、文化、スポーツ、経済の交流は好調だ。選挙結果いかんにかかわらず、関係はさらに深化していくことが期待される。最近の沖台交流の実績や傾向、日台漁業協定の意義などを台北駐日経済文化代表処那覇分処の蘇啓誠処長に聞いた。(聞き手=豊田 剛)

乗船客の通関手続き簡素化を

沖縄を訪れた外国人観光客の約4割が台湾人

 ――最近、台湾からの観光実績はどのように推移しているか。

 昨年、沖縄を訪れた外国人観光客は98万人で、そのうち台湾人は36万人で約4割を占めた。今年は昨年を上回り40万人ぐらいになると見込んでいる。

 空路を見ると沖縄―台湾間は従来の中華航空だけだったが、2011年11月のオープンスカイ協定締結後、トランスアジア、エバー、ピーチが参入。今年6月からはLCCのタイガーエアの定期便が就航した。現在は5社、7便が毎日那覇と台北(桃園)を結んでいる。

 クルーズ船の場合、通常4月から10月までがシーズンだが、今年は3月から沖縄に寄港している。週に2隻が石垣島、1隻が那覇に寄港している。1隻あたり1500人が乗船しているが、通関手続きに時間がかかり過ぎるのが問題。そのおかげでショッピングの時間が少なくなり、沖縄の経済にとっては大きな損失だ。手続きの迅速化を求めたい。

 ――台湾の人々にとって沖縄の魅力は何か。

 沖縄は海がきれいで人気があり、特に古宇利島は最近の人気スポットになっている。沖縄のホスピタリティーも魅力だ。

 ただ、沖縄から台湾へもっと旅行してほしい。石垣路線はほとんど台湾からの一方向になっている。このままでは路線維持が難しくなる。

 ――沖縄と台湾の文化交流実績は。

 平均年齢74歳の沖縄の合唱団「アミーチ」は1月に姉妹提携を交わしたことを記念して台北のコンサートに出演した。5月には台湾の三つの合唱団が沖縄を訪れ「アミーチ」と合同コンサートを行った。

 また、台東県の原住民は沖縄本島北部を中心に歌と踊りを通して交流活動を行った。昨年沖縄市で開催されたアジア国際音楽祭には台湾から300人が参加した。

 ――NAHAマラソンに代表されるようにスポーツ交流も盛んだ。

 昨年のNAHAマラソンは30周年を記念して850人ものランナーが集った。今年は800人の参加が見込まれている。

 また、1999年9月に発生した台湾大地震をきっかけに始まったゴルフ交流は台中市と沖縄の間で行われている。今年は8回目が開催されたが、その収益の一部は被災地の復興に充てられている。

 このほか、青少年サッカー、少年野球、高校生のバスケットボールの交流も近年盛んになっている。

 ――台湾の大手セメント会社嘉新水泥が那覇の中心部にホテル建設を計画するなど、台湾企業の沖縄への投資の動きが盛んになっているようだ。

 嘉新水泥は那覇市の国際通り沿いの土地約1650平方㍍を購入した。同社は豊見城(とみぐすく)市で発展著しい豊崎地区への進出も計画しているという報道もある。

 また、花蓮県の徐祥明副知事が7月に県庁を訪問し、花蓮と沖縄間で農産品など経済貿易で交流と連携を行うことで一致した。物流と旅客両面を担う高速フェリーの花蓮―石垣島間の就航に意欲を示している。

 ――沖縄からのアプローチはどのような感じか。

 沖縄県は外資誘致に力を入れていて、今年1月に十数社からなる県の訪問団が台北を訪れ、台湾の100社以上と商談した。

 また、内閣府沖縄総合事務局は台湾の企業とタイアップして製造業を興せないかと模索している。

 ――2013年に締結された日台漁業協定で沖縄からは当初、譲歩し過ぎと不満の意見が目立った。現状はどうか。

 協定に調印してから違法操業の取り締まりが厳しくなっている。むしろ調印後の方が沖縄のマグロ漁獲高は多いという。明確な漁業ルールがあるため安心して漁に出られるということが重要だ。

 ――昨年末の地方選挙で与党の国民党が大敗した。来年1月16日には総統選と立法委員(国会議員に相当)選が同時に行われる。沖縄でも昨年末、翁長雄志知事が誕生した。こうした政治環境の変化は沖台関係に影響するか。

 総統選は今のところ民進党候補の蔡英文主席がやや優勢である。選挙の結果いかんが、今後の日台関係を左右する。

 翁長知事は県議時代は琉台議連に参加し、那覇市長時代には台北を訪問している。1月に県庁を訪れ、台湾への県費留学を復活させるよう要請したら、さっそく実現してくれた。また、11月には県主催の観光感謝の夕べが台北で開催されることになっている。


そ・けいせい

 1957年台湾嘉義県生まれ。私立中国文化大学大学院日本文学と大阪大学大学院日本学で修士号取得。大学非常勤講師を務めた後、1991年に外交部に入る。台北駐日経済文化代表処秘書、亜東関係協会総務課長、副秘書長などを経て2013年12月に現職に就任。