戦後70年、自国の防衛力確立を 自民党衆議院議員 國場幸之助氏に聞く

政府は沖縄との距離感理解せよ

 昨年12月の衆院選では沖縄県は全小選挙区で自民党候補が敗北した。米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古沖への移設が最大の焦点となり、苦戦を強いられた。政府、党本部に対する沖縄の代弁者として奮闘し、比例代表で復活、2期目の当選を果たした自民党衆議院議員の國場幸之助氏に衆院選における本土と沖縄の温度差、南西諸島防衛などについて聞いた。(那覇支局=竹林春夫・豊田 剛)

南西地域防衛に認識甘い県

観光業主導で経済振興図れ

戦後70年、自国の防衛力確立を

 ――12月の衆院選は本土では自民党が圧勝したが、沖縄選挙区では自民党候補が全敗した。この結果をどう検証するか。

 小選挙区では1区は共産、2区は社民、3区は生活、4区は無所属が当選するという信じられない事態となった。しかし、現在の選挙区制度の中で、自民候補4人が比例で復活当選した。これも民意であり、沖縄県には多様な民意が存在していることの表れだ。

 一般的に、沖縄の自民党候補は普天間飛行場の移設問題で負けたという総括になっているが、実際は違う。

 中央政府はどういう距離感で沖縄に向き合えばよいのか分からないのではないか。具体的な例が、2013年4月28日の政府主催の「主権回復記念祝典」で表れている。私は式典における首相の「祝辞」を「あいさつ」に切り替えるべきだと内閣準備室に提案した。60年前に主権復帰した時、沖縄と奄美は日本ではなかったからだ。沖縄を含めて日本なのか、歴史認識の問題だ。沖縄が真に主権回復をしたのは本土復帰した1972年5月15日。将来、自主憲法制定と北方領土返還がなされて初めて主権回復したと言えるだろう。

 政府が沖縄に対するとき、振興策だけで止まっているのではないか。県民は権力によって押さえつけられることに繊細に反応している。

 ――革新陣営は辺野古移設反対の一点で共闘した。逆風は感じたか。

 2009年の衆院選の時のような厳しさはなかった。逆風というよりは無風だったが、広がりがなかった。「自民党や知事は『公約を破った』『権力に屈した』」と世間で言われ、支持者が萎縮したため広がらなかったと痛切に感じる。革新陣営は、「オール沖縄」という共産党を主導とした統一戦線が功を奏したのではないか。

 これまで、基地反対という民意がありながらも、名護市長選や知事選では、条件付きで基地を容認しながら選挙に勝ってきた歴史がある。基地問題を含めた沖縄政策は、政府との信頼醸成、お互いの歩み寄りが必要だ。基地反対が県民の民意だと主張するだけで、大局的な視点から具体的な解決策を見いだす努力がなければ、基地問題解決は難しい。

 ――翁長雄志新知事は、普天間飛行場の在沖海兵隊は抑止力ではなく他国からの攻撃の対象でしかないとの認識だ。国境離島防衛に対してどのような認識を持つか。

 外国の軍隊に頼るのか、自国の防衛力で守るのか、そろそろ考えるべき時に来ている。敗戦国ということは忘れてはならないが、戦後70年が経過した現在、自国の防衛力を確立するという方向性が必要だ。

 一方、中国は相手の足元を見て、長期的戦略をもってアプローチする国家だ。このため、日本にとって日米同盟とそれに基づく毅然(きぜん)とした自衛力が必要だ。そもそも、海洋国家である日本が海兵隊の機能を持っていない。海兵隊のような防衛力を整備していく必要がある。

 ――尖閣諸島沖合で中国の公船による領海侵犯が頻繁に起こっている。これに対して県はもっと抗議の声を上げるべきではないか。

 これは米軍の事件・事故に匹敵する問題であり、領海侵犯があるごとに県議会、市町村議会は全会一致で抗議決議すべきだ。最近、中国の違法サンゴ船が沖縄近海や小笠原諸島近海で赤サンゴを乱獲したため、罰則規定を強化した。海を含めた南西地域防衛に対する認識はまだまだ甘い。

 ――自民党の谷垣禎一幹事長は今年の通常国会を「安保国会」にしたいとの考えだが、昨年7月1日に閣議決定した限定的集団的自衛権についての考えは。

 日本の国土防衛、日本人の生命と財産を守るため、そして戦争に巻き込まれず、攻めてこないようにするための法整備だから必要なことだ。日本はこれまで、安全保障を考える上で同盟国と情報共有が十分にできていなかった。国会では、危機管理情報をいかに集め、保護すべきものは保護し、活用していくか、インテリジェンス機関の創設、危機管理の人材育成の取り組みが大事になってくる。国を守るのは究極的には国民なので、国民的議論を高める必要がある。

 国連憲章では個別的自衛権と集団的自衛権の行使はそもそも認められている。戦後70年経過して、安全保障、国の主権は何なのかを考える必要がある。中国の軍事戦略、米国の外交政策など大局的な議論が国民レベルで欠落していた。

 ――安倍政権は今年から地方創生に力点を置く。沖縄では何から取り組めばいいか。

 皇室、安保、外交、金融を除いて東京一極集中を是正すべきという考えだ。何年かに一度起きる大震災を考えると、危機管理の観点からもリスク分散が必要だろう。沖縄は、観光業をリーディング産業として、経済の振興を図る。そのための人材の育成、教育の改革が必要だ。また、有人離島を保護すること。離島を活性化させるにはインフラ整備し、本島との交流人口を増やすことを考えるべきだ。


こくば こうのすけ

 昭和48年沖縄県那覇市生まれ。平成9年早稲田大学社会学部卒、同12年沖縄県議会選初当選、同15年総選挙に出馬したが落選。同16年県議会選2期目当選、沖縄県連の青年局長、幹事長代理など歴任、同20年9月より第一選挙区支部長、同24年12月の総選挙で初当選。現在2期目。好きな言葉「誠心誠意」。美穂夫人と娘3人。