立憲民主の代表質問 同性婚の訴えは“綱領路線”

LGBTを選んだ「多様性」

 立憲民主党の枝野幸男代表は、衆院本会議の代表質問で国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」への補助金交付を中止した文化庁を批判し、また、同党などが衆院法務委員会に提出した同性婚を認める民法改正案の成立を求めた。

立憲民主の代表質問 同性婚の訴えは“綱領路線”

衆院本会議で代表質問する立憲民主党の枝野幸男代表(手前)。左奥は安倍晋三首相=7日午後、国会内

 「あいちトリエンナーレ」には昭和天皇の写真を燃やす映像など反日的な政治色が濃い企画展「表現の不自由展・その後」に対して抗議が殺到し、同企画展は一時中止。展示が再開された後も、かつて同じ民主党にいた河村たかし名古屋市長が座り込みをして反対するなど、愛知県の税金の使い方に疑問を感じた納税者も多い。

 また、同性婚を認める法案は同党と共産、社民の3党が6月に国会に提出したが、家庭観をめぐり論争を呼ぶものだ。

 1月の通常国会の代表質問では「『多様性を認め合い、お互いさまに支え合う』社会の実現を目指す」という主張で、同党機関紙「立憲民主」2月15日号の見出しにもなった。「多様性を認め合い、…お互いさまに支えあう」社会は、同党綱領の最初に出てくる結党目的である。記事では、枝野氏が「『少数の立場や意見を認め合い、差別や分断を許さない社会にすることは、すべての人の安心につながる』と多様性の意義を強調」したと指摘した。

 ただ、同党綱領は「共生社会」について、「あらゆる差別に対して断固として闘います。性別を問わずその個性と能力を十分に発揮することができるジェンダー平等を確立するとともに、性的指向や性自認、障がいの有無などによって差別されない社会を推進」すると明記し、具体的にはジェンダーフリー、LGBT(性的少数派)のための「闘い」を選んでいる。

 このため、同党の多様性社会実現に向けた「差別との闘い」のプライオリティーは、ジェンダーフリーやLGBTが高く位置付けられること必至だ。「立憲民主」5月17日号は4月のLGBT関連イベントのパレードに並ぶ枝野氏ら同党議員らの写真と記事をトップにした。今臨時国会の代表質問で同性婚が強調されたのは立憲民主党の“綱領路線”とも言えるだろう。

 「共生社会」は民進党時代の綱領にあり、「多様性を認めつつ互いに支え合い」と同様な表現が載っていた。だが、具体的に明記されたのは「男女がその個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画を推進する」と、性差の前提がある「男女」だった。「共生社会」の理念を立憲民主党は、よりニッチな路線で引き継いだと言える。

 また、民進党の綱領で「闘い」と書かれた箇所は、「差別」ではなく「既得権と癒着構造」との闘いだった。前身の民主党時代に政権を取る前のキャンペーンは、政官財癒着批判であり、当時の党機関紙「プレス民主」の見出しも「霞が関解体」などだった。代わって立憲民主党の、性差を否定する過激なジェンダーフリーや民法改正の試みは、「(男女の結婚による)家族解体」の恐れもある。

 また、これまで「差別との闘い」を打ち出してきた社共など左翼政党の場合、差別・被差別の対立概念を持ち込む闘争のため、日本や日本人、「天皇制」への敵愾(てきがい)心のあまり自虐的な主張を繰り返してきた。立憲民主党も近いものがある。

 結局、野党の持ち出す「多様性」とは、少数派によって多数派の保守層を攻撃するのが実際のところだ。今国会で立憲民主党が国民民主党と統一会派を組み、民主党再興の動きと見る向きもあるが、立憲民主党は左傾化し、10年前に3000万票集めたような幅広い中道勢力になるには程遠い。

編集委員 窪田 伸雄