参院選の野党共闘 「バラバラ」「野合」と自公

立憲・共産は“依存症”に

参院選の野党共闘 「バラバラ」「野合」と自公

参院選立候補者らの街頭演説を聞く有権者=14日、東京都千代田区の有楽町駅前

 参院選の投票が明日に迫った。今回も前回2016年と同様に「1人区」における与党対野党共闘の勝敗が焦点だ。32カ所ある改選数1の地方選挙区のうち自民党候補と対決する野党統一候補の内訳は、立憲民主公認7、国民民主公認6、共産公認1、無所属18の32人だ。

 2度目の野党共闘の挑戦を自民党は強く意識している。機関紙「自由民主」(7・16)は、1面トップ見出しの一つに「野党共闘を痛烈に批判」と取って、公示日の4日に安倍晋三首相が福島市で行った応援演説を扱った。「今回の参院選で野党は1人区で統一候補を擁立しているが、国民の生命と財産を守っている自衛隊を違憲と主張する政党が入っていることを問題視。『大切なことも統一できていない。もし当選したら、またバラバラで決められない政治の再現だ』と痛烈に非難した」と強調している。

 公明党の公明ニュース(同党サイト)の「編集メモ」(7・5)も「党首討論で露呈 野党共闘、やはり“野合”」の見出しで批判。3日の党首討論(日本記者クラブ主催)で、年金制度をめぐり「共産のマクロ経済スライド廃止の主張に対し、野党第1党である立憲の枝野幸男代表は『新しい提案』『抜本的な議論をもう一度』などと述べるばかりで、賛否は明確にしなかった」など足並みの乱れを指摘。自衛隊の違憲・合憲、消費税財源の教育無償化でも立憲、国民、共産、社民など対応が分かれる点を挙げた。

 前回、他野党との共闘を大宣伝した共産党の機関紙「しんぶん赤旗」だが、今回は「現状は、比例で現有5議席に届いていません」(7・17)と1面横大見出しにするなど、自分の選挙に余裕がなくなった。日刊で紙面が豊富な同紙の4面あたりに野党共闘の選挙区のコーナーを設けている。

 しかし、首相の「バラバラ」との批判に対し、14日付2面に「時代遅れの首相 『自衛隊』『安保条約』で共産党攻撃繰り返す」との見出しで反論を載せた。首相の何が「時代遅れ」と主張しているかというと、自衛隊・安保などの政策の違いによる「共産党攻撃で野党や市民の共闘を分断するという手法は、もはや時代遅れであることが証明され」たという。

 その「証明」とは、それでも立憲民主党の枝野代表らが一緒に選挙をすることを拒否していないという論理だ。記事には、福井選挙区の野党統一候補で唯一の共産党公認・山田和雄候補の応援に枝野氏が入った写真を載せた。

 同紙は野党共闘の一致点は「安保法制など立憲主義破壊の違憲立法の廃止です」と強弁するが、今回はそれほど安保法問題を野党側は争点にしていない。

 また、安保法だけでなく、自衛隊違憲の立場の共産党は自衛隊法も「違憲立法」と見ている。記事でも「憲法9条に照らせば、自衛隊が憲法違反であることは明瞭」で、「国民的合意が成熟した段階で、憲法9条の完全実施に向けての本格的な措置に着手」すると明言。さらに「国民多数の合意で、日米安保条約を廃棄」する立場だ。

 このような共産党と統一戦線を立憲民主党など野党が組むようになったことを、共産主義に裏打ちされた党綱領路線に沿って時代が「進歩」したと考えるから、首相に「時代遅れ」との理屈をひねり出せる。

 立憲民主党は「日米安全保障体制を基軸としつつ、国際協調と専守防衛という基本姿勢を貫きます」と公約するが、共産党との共闘は甘くない。基本政策棚上げで政治改革の目標である政策選挙に逆行するばかりか、共産党依存症になる。

編集委員 窪田 伸雄