知事選にらむ「自由民主」、「オール沖縄」の軸足くじく
名護市長選の自・公機関紙
「激戦を制し知事選へ弾み」―自民党機関紙「自由民主」(2・13)は1面トップに公明、日本維新の会とともに推薦した渡具知武豊氏の名護市長選当選を受け、さっそく沖縄県知事選に向ける見出しを立てた。
「わが党は、名護市長選での勝利を弾みに、天王山となる沖縄知事選での勝利に向け、今後、同県各地で行われる首長選と議会議員選の勝利に全力を挙げる」
2014年12月に当選した翁長雄志知事の任期を今年迎える。同知事選で、自民党県連の重鎮だった翁長氏が共産党と組み米軍普天間基地撤去、辺野古移設阻止を公約して「オール沖縄」という共闘勢力ができた。国政では反安倍政権を掲げ、翁長知事就任直後の14年衆院選、16年参院選、昨年の17年衆院選と沖縄で自民党は連敗している。衆参選挙区で得たのは、昨年やっと衆院沖縄4区の1議席のみ――この流れを変えたいのが自民党・安倍政権だ。
知事選の前に辺野古がある名護市で「オール沖縄」の稲嶺進市長の続投を阻めば、既に最高裁判決で翁長知事による辺野古埋め立て工事の承認取り消しは違法とされている上、「オール沖縄」は軸足となる移設現場で民意を得られなかったことになる。いわば実現できない阻止運動は空回りするようになり、翁長知事の求心力は弱まる。
選挙前に発行された同紙2月6日号でも最終面のカラー全面で同市長選を扱い、「名護市長選 とぐち候補の勝利に全力」との見出しで塩谷立・党選挙対策委員長インタビューを載せた。同紙の紙幅としては国政選挙並みの力の入れようだ。
「同市長選は、沖縄県知事選に向けた重要な選挙であり、絶対に負けられない戦いである」
このようにリードで書き、「名護市の経済活性化が最大の争点であり、『地域経済』と『市民生活』の向上が至上命題」だと塩谷氏は述べ、その理由について「普天間基地の辺野古移設の是非などにより名護市民が二分され、市政運営が停滞したことで、地域経済の低迷が著しい」と訴えた。あえて「オール沖縄」が勝負したい争点の「辺野古」を避け、地域経済低迷を突いた。対する稲嶺陣営は「辺野古隠し」と批判し、余計に移設反対を叫んだ。
稲嶺氏の敗因について同紙2月13日号は、「オール沖縄勢力から支援を受けた現職市長は、基地反対ばかりを訴え、地域経済や住民生活の向上が実現しなかった2期8年の姿勢に批判が集ま」ったとみる。
また、前回は自主投票だった公明党が今回は自民党と協力して渡具知氏を推薦。公明新聞(ネット版)は、山口那津男代表が1月18日に「『勝利に結び付けることが大事だ』と述べ、激戦突破へ総力を挙げて取り組む考えを示した」(同18日付)、同党沖縄県本部代表の金城勉県議が同22日の渡具知氏の決起集会で「『必ず逆転勝利を果たそう』と訴え、絶大な支援を呼び掛けた」(同23日付)など、頻繁に報じた。創価学会の組織票を持つ同党の本腰を入れた取り組みも、渡具知氏の主要な勝因であろう。
編集委員 窪田 伸雄