「自由民主」の科学政策重視

第4次産業革命が成長戦略、「骨太」「未来投資」で新社会像

「自由民主」の科学政策重視

経済財政諮問会議・未来投資会議の合同会議で発言する安倍晋三首相(左から2人目)=今月9日午後、首相官邸

 「第4次産業革命」に安倍政権はアベノミクスの成長戦略を期待している。自民党の機関紙「自由民主」(6・20)は、1面で政府が9日に閣議決定した経済財政運営の基本指針「骨太の方針」、「未来投資戦略2017」を、「人材への投資で生産性を向上」「経済再生なくして財政健全化なし」「ソサエティー5.0を実現」の見出しで扱った。

 政府が「未来投資戦略」で提唱したソサエティー5・0(Society5.0)とは、人類史上の狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に続く5番目の新たな社会を指す。人口減少時代を逆手に取り、人工知能(AI)やIoT(自動車、家電ほかさまざまなモノがインターネットに接続されること)による第4次産業革命がもたらす「新しい価値やサービスが次々と創出され、社会の主体たる人々に豊かさをもたらしていく」という社会像だ。

 これを同党はアベノミクスで「GDP600兆円」を掲げた経済再生のカギと見て、同紙でもAIなど科学技術政策に関する記事が目立った。

 見出しを列挙すると、「人工知能未来社会経済戦略本部 AIの駆使を提言」「科学技術イノベーションで変革を」「経済成長と社会課題解決」「重点分野へ予算集中配分」「オールジャパンで取り組む(塩谷本部長)」「第4次産業革命で世界をリード」(5・30、1面)。ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章氏らを交えた座談会「危機に立つ日本の科学技術」(6・6、6~8面)、「塩谷立党人工知能未来社会経済戦略本部長インタビュー」「人工知能の実用化を推進」「骨太の方針、経済成長の柱に」(6・13、1~2面)などだ。

 同紙は、AIについて「将来の国力を左右する」「次の産業の覇権をかけて世界で激しい競争が展開される」として同本部の議論を紹介。「資金や人材を集中して科学技術イノベーションを起こし社会の構造を変革」する必要から「政府の人工知能技術戦略会議を、基礎研究から社会実装までを取り組む……司令塔に位置づける」などと伝えた(5・30)。また、政府に「提言」を申し入れた塩谷氏は、AI予算を「来年度は1000億円規模に引き上げるよう提案」し、自動走行や介護ロボットは「実現段階」と期待した(6・6)。

 「座談会」(6・6)に出席した同党科学技術イノベーション戦略調査会の渡海紀三朗会長は、AIやIoTなどへ集中投資を表明しながらも、「絶対的な投資額が不足している」と訴え、2000年ごろから日本は殆(ほとん)ど変わらないのに対し「中国は10倍」「ヨーロッパと米国は1・5倍」と指摘している。梶田氏は「日本の科学技術の立ち位置は相対的に低下している」と懸念を表明した。

 とても「世界をリード」とは言えない現状である。今後、同党は教育改革も併せながら第4次産業革命に向けた投資に成長戦略の軸足を置く。財政再建論からの不評や社会変革の負の側面の予想もあるが、技術立国としてサバイバルするため進むべき国策である。

編集委員 窪田 伸雄