民主党の争点設定、1人区で反安保法共闘

格差解消の共生社会提唱

岡田克也代表

定期党大会であいさつする民主党の岡田克也代表=1月30日午後、東京都内のホテル

 民主党の機関紙「プレス民主」2月5日号は党大会を扱った。夏の参院選に向けた決起大会でもあり、民主党が打ち出す選挙争点がうかがえる。同紙1面「民主党2016年度定期大会」「党のためではなく日本のために」(見出し)との岡田克也代表あいさつ記事などから、①共生社会②反安保法制③政治刷新―などを公約化し「民主党マニフェスト」として有権者に訴える方向だ。

 ①は民主党綱領の「私たちの目指すもの」の筆頭理念であり、代表あいさつ記事でも冒頭部で指摘。同党共生社会創造本部の議論を紹介し、「特に取り上げているのは格差の問題。教育格差、雇用格差、男女格差。そういった格差の壁を打ち破り、1人ひとりが大切にされる日本を目指す」と述べている。

 この姿勢は、同紙面にも掲載されている選挙ポスターの「1人ひとりを大切にする国へ」の標語に表れ、安倍政権の「一億総活躍社会」と対照的な訴え方をするものだ。同本部が昨年12月に発表した「中間とりまとめ」では、「格差の小さい先進国モデル国家」を目指す―としており、子供、若者、女性、非正規労働者、障害者、ひとり親世帯など各層の「貧困率」の縮小を目指している。

 その際、各種手当て・援助に伴う財源の確保には、所得課税・資産課税の累進制の強化や高所得者の基礎年金の減額・停止を議論している。公約では弱者配慮が重心になり、配分による平等社会を追求するとみられる。

 ところで、記事の見出しどころは、「この選挙、民主党のためでなく日本のためにわれわれは頑張らなくてはならない。…安倍政権の暴走を止め、もう1回われわれが近い将来、政権を担えるそういう存在に成長できる、そのための大きなきっかけにこの参院選をする」との結び部分だ。

 前段で岡田氏は自身の自民党離党理由に触れており、「1党支配はだめだ、政治が腐る、政治が国民から離れる、やはり自民党以外にもう一つ大きな固まりを作って、お互いが良い意味で競い合っていく政治にすることです」と強調した。自民の閣僚辞任、議員辞職が続くところ③の争点化もなされよう。

 ただ、「もう1回」民主党が政権交代の選択肢となるかは有権者が決めるが、これまでの選挙ではそうなっていない。「安倍政権の暴走」批判で力が入る②では、民主党は19日に共産、維新、社民、生活の5野党共同で安保法廃止法案を提出する予定で、野党共闘を進めている。

 代表あいさつ記事でも、「憲法の平和主義、立憲主義、あるいは民主主義さえもが今、危機的状況にある」と安保法制を批判し、参院選の1人区対決に昨年の反対デモの再起を期待している。

 が、反安保法制では、「日米同盟深化」に触れる民主党綱領より反米反安保を謳(うた)う共産党綱領の方が矛盾がなく、組織力も共産党が上だ。共産党は「国民連合政府」の政党間協議合意が選挙協力の前提と迫っており、野党共闘に潜む党利党略の次第では、「日本のため」と言いながらも「共産党のために」なりかねない。

 解説室長 窪田 伸雄